今日の為替ウォーキング

今日の一言

偉大な人はアイデアについて話す、凡庸な人は出来事を話す、狭量な人は他人の話をする。- エレノア・ルーズベルト(元米大統領夫人)

Rolling in the Deep

 世界の投資家が考える、2022年の最大のリスクとは何か?

 それは、新型コロナでも米中関係でもなく、「中央銀行」です。今年利上げするのか、しないのか?利上げするとすればいつなのか?FRBが利上げしたら、ECB(欧州中央銀行)はどうするのか?日銀はいつまで量的緩和を続けるのか?そしてトルコ中銀はまだ利下げするつもりか? などなど、2022年の中央銀行の政策の予測はとても難しい。しかも中央銀行の金融政策は、他の経済指標とは比較にならないほど、FXや株式市場に重大な影響を与えます。

 何が中央銀行の政策を動かすのか?それは「インフレ」です。インフレはグローバルな事象ではなく、各国の経済事情によって異なるローカルなイシューといわれますが、今のインフレは米国だけではなく、欧州、英国、中国と、世界同時多発的に発生しています。日本は無関係だとはいっていられません。1月に食パンの値段が10%近く値上げされたことを皮切りに、今年は食料品や衣料品、家電や自動車、保険料から交通運賃に至るまでほぼ全分野の商品が大幅値上げとなるのは避けられないのです。昨年11月の国内企業物価指数は、すでに41年ぶりの上昇となっています。

 このインフレはどのようにして始まったのか。それは新型コロナです。2020年3月に新型コロナ感染が大流行して、世界の主要都市が次々とロックダウンを導入。多くの人々は仕事を失い、移動の自由を奪われるなかで、中央銀行は緊急利下げと未曽有の量的緩和を行い、政府は経済対策として現金給付を決定しました。

 2021年になってコロナワクチンが普及し始め、昨年1年で米国では75%、日本では80%、世界全体でも50%が部分接種を完了。そのおかげもあって移動制限が緩和され、人々が再び自由に外出できるようになると、「リベンジ消費」と呼ばれる時間差の消費需要が発生しました。

 需要はいちどきに発生し、またロックダウン期間中の小売店は在庫が品薄だったことも重なって、流通網に多大な負荷をかけた結果インフレが大発生。つまり、需給のバランスが崩れたことがインフレの原因といえます。2021年後半の経済は、ロックダウンや緊急事態宣言などで使う機会がなかったお金を財源として発生した熱狂的な消費者需要が、インフレを加速させたのです。

 しかし、給付金をすべて使い切ってしまったら、異常な需要は終息して、インフレも波が引くようにいなくなる可能性がある。ECBはそう考えていて、利上げする必要はないとしています。FRBも最初はインフレ一過性論者だったのですが、想定以上にインフレが長引いていることを認め、利上げの準備をしています。インフレへの警戒がマックスに高まっている今が、異常から正常への転換点に立っているのかもしれません。

 ところがオミクロン変異株が登場したことで、再び先が見えなくなっています。感染拡大がおさまらず、各国の政府がロックダウン再導入を決断し、景気対策で現金を給付するならば、2020年の繰り返しとなり、オミクロン変異株は一段のインフレ要因となります。

 しかし、政府の財源は無限ではない。現金給付金なしで厳しい移動制限を強制するならば、需要は後退し、特に旅行などサービス産業がダメージを受けることになるでしょう。この場合、オミクロン変異株は逆にデフレ要因となります。