ビックスリーの救済騒動から催促相場の様相を呈していたNYダウが10月10日の安値7882ドルを割り込み底割れとなった。また、シティグループの株価が5$を割り込んだことで投資家の不安心理に拍車をかけている。米CNBCは「シティグループが株価急落に対応し、他社との合併を目指す可能性がある」と報じており、合併先としては、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックス、ステートストリートが噂されている。米国からの情報(噂)では、シティグループについて21日のNY市場でなんらかの決定がなされるようだ。シティグループ以外の米国の金融株もみな急落となっているが、これはCDS(企業倒産に対する保証・保険のデリバティブ商品)のプロテクションの売り手(保証をする側)のヘッジである。現在、株式を売ること以外にヘッジが出来ないからである。

シティグループ(左)とGM(右)の日足


(出所:石原順、ブルームバーグ)

今日のNY市場でシティグループへの催促相場の結論が出るという期待感とシティグループをつぶすことはないという憶測で21日の東京外為市場では買い戻し優勢となっている。また、本日はオーストラリア準備銀行が豪ドル買いの市場介入を実施している。

21日の東京外為市場 豪ドル/円・ユーロ/円・ポンド/円・ドル/円


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足) 21日移動平均線(1カ月の市場参加者のコスト)が大きな抵抗


(出所:石原順、ブルームバーグ)

しかし、相場の方向テストでレンジを下抜けたNYダウは下方向のバイアスが強い。円相場は株価連動相場となっているため、NYダウの底割れにより今後ドル/円で90円を超える円高になる可能性がある。現在の焦点は円相場が株の底割れに追随して先の円の高値を試しにいくか否かであろう。ポンド/円は11月20日にポンドの安値を更新しており、他のクロス円相場がこれに追随する可能性は否定できなくなっている。

NYダウ(左)と日経平均(右)の日足


(出所:石原順、ブルームバーグ)

相場の変動率がここから上昇に向かえば円高になる確率が高くなる。26日という中期タームでみると、現在、外為市場の変動率が上昇するかどうかは微妙な状況にあるが、ここから2~3日間の動きで相場の方向が決まってくるだろう。

ドル/円(日足) 変動率(26日標準偏差ボラティリティ)の推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/ドル(日足) 変動率(26日標準偏差ボラティリティ)の推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

東京市場は3連休になるが、週明け月曜日の動きには注意したい。現在の相場はNY株式市場の引け1時間前に猛烈に動く事が多くこの時間帯がデイトレーダーの収益機会である。

楽天FX 豪ドル/円(1時間足)21時間ボリンジャーバンドと移動平均線の傾き


(出所:石原順、ブルームバーグ)

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2008年11月20日まで)

ドル/円およびクロス円市場は“円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する”という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間では円の売り放置やキャリートレードはリスクが高くなる。ATRは過去に見ないような高い変動幅を記録しており、現在は平時よりもリスクの高い局面であることに注意していただきたい。相場は短期的にもちあい離れとなっており、円売りのリスクは大きい。また、変動率が低下しても変動率の絶対水準が高すぎるので相場の振れが大きくなる。こういった局面ではレバレッジを低くしておくことが肝要となろう。

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ランド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)