強弱材料レビュー

 日経平均が膠着しているのは、強弱材料が拮抗しているからです。その内容をレビューします。

強材料

【1】企業業績好調

 企業業績予想の上方修正が続いています。東証一部3月期決算主要841社の今期(2022年3月期)純利益は、期初会社予想では19.1%の増益でした。その後、利益予想の上方修正が増えた結果、12月21日時点で、36.3%増益予想となっています。

【2】株価指標で割安との見方も

 東証一部の予想PER (株価収益率)は15倍まで低下し、割安感が出ていると考えています。

弱材料

【1】米FRBタカ派色強める

 テーパリングを加速、来年利上げを3回実施する予測を出していることに不安が広がっています。11月の米インフレ率が6.8%まで上昇したことが背景にあります。

 ただし、市場では米インフレ率は来年には沈静化するとの見方があります。資源価格は既に下落しており、また、米国のモノ不足の原因となっている物流停滞も、来年には解消するとの見方があります。

 こうした見方を背景に、米長期金利は足元1.5%と落ち着いた動きとなっています。今年3月には一時1.7%を超えて米景気過熱リスクが意識されましたが、その時と比べると、米景気過熱リスクは低下したと考えられています。

【2】ウクライナ情勢をめぐる地政学リスク

 ウクライナ国境付近にロシア軍が集結、来年にもウクライナに侵攻する可能性があることが、株式市場の不安材料となっています。

 ウクライナはもともと旧ソビエト連邦の重要な一部でしたが、ソ連邦崩壊後の1991年に独立しました。独立後も、ロシアの影響力の強い国として留まってきましたが、近年になってロシアの影響力を排除し、EU(欧州連合)に接近する動きを続けています。そうした中、ウクライナ東部で、ロシア系住民(親ロ派勢力)と親EU派との間で紛争が続いています。

 2014年には、ウクライナがEU勢力に取り込まれることに焦りを感じたロシアが、ロシア系住民の多いクリミアに軍事介入しました。そして今、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構:欧州および北米30カ国による政府間軍事同盟)への加盟を検討し始めたことを受けて、「ウクライナのNATO加盟を阻止する」目的で、ウクライナへの侵攻を辞さない姿勢を見せています。

 台湾海峡およびウクライナの地政学リスクが、株式市場にとって不安材料となっています。バイデン政権の対応力が試されています。

【3】中国リスク

 実質デフォルト状態にある不動産大手、恒大集団のデフォルト処理がどうなるか、不安が高まっています。中国政府は、中国国内にショックが起こらないようなソフトランディングを模索していますが、中国のやり方に海外投資家は反発を強めており、すんなり決着しそうにありません。
 恒大の処理を誤ると、中国の不動産市場全体のさらなる下落、他の不動産大手への信用不安の波及のリスクがあります。中国政府が中国のハイテク成長企業への締め付けを強化している問題も含め、中国景気の悪化リスクが意識されるようになっています。

【4】オミクロンのリスク

 
変異株オミクロンの感染拡大で、世界経済がもう一度、ダメージを受けるとの見方もあります。ただし、今のところ、オミクロンは感染しても無症状か軽症が多いので、世界経済に与える影響は限定的との見方が優勢となりつつあります。