今日の為替トレッキング

今日の一言

明日に延ばしてもいいのはやり残して死んでもかまわないことだけ。- パブロ・ピカソ

Have You Ever Seen The Rain?

 バイデン大統領は今年4月「米国における一世代に一度の投資」と銘打って、大インフラ投資計画を発表しました。1950年代の州間高速道路システムの建設以来過去70年間で最大規模の計画です。

 バイデン大統領のインフラ投資計画は、橋や道路の建設といった「オールド・エコノミー」だけではなく、水道管交換による清潔な飲料水の提供や高速ブロードバンドの整備、電気自動車充電スポットの全国的なネットワーク拡充や人工知能(AI)など研究開発投資に対して、防衛関連以外としては過去最大の投資を行うものです。

 バイデン大統領はインフラ計画が「中国との競争で必要不可欠」だと強調。インフラ計画には、中国からの部品供給の依存度を下げるために、半導体のサプライチェーン(供給網)強化も盛り込まれています。バイデン政権が中国との対立姿勢を明確にしたことは、地政学的にも重要。両国の緊張関係はトランプ前大統領時代よりも、高まったとも考えられます。

 この1兆ドル(約113兆円)規模のインフラ投資法案は2021年11月5日に米議会下院が賛成多数で可決しました。上院はすでに8月に「超党派」で通過しているので大統領の署名を経て成立は確実となりました。バイデン政権にとって、内政上の重要な成果となりました。

 話はここからです。バイデン大統領の大型プランはもう一つあるのですが民主党内リベラル勢がインフラ投資法案と同時成立を目指した社会福祉や気候変動などに対応した大規模の歳出法案の採決は見送りとなっていました。

 この「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」と名付けられたバイデン大統領の看板政策である子育て支援や気候変動対策などを盛り込んだ1兆7,500億ドル規模(約200兆円)にのぼる「BBB法案」に対して、民主党のマンチン上院議員が「賛成できない」と表明。その理由として、大型歳出法案が財政赤字を拡大させ一段の物価高を招く懸念が大きいことをあげています。

 上院の民主党と野党・共和党の議席数が50ずつで拮抗しているため、民主党のマンチン上院議員が反対に回ってしまえばBBB法案は不成立となります。米国のGDP(国内総生産)成長見通しはインフラ投資とBBB支出を想定しているので大きな影響が出る可能性があります。

 FRBが緩和縮小を終了し、来年の利上げの可能性を示したタイミングで、米国政府がさらに経済成長の足かせとなるような事態を引き起こしたともいえます。

 FOMCが公表したドットチャートによると2024年のFF金利は2%まで上昇すると予想。しかし、1.50%に引き上げることさえ無理ではないか、とマーケットは考え始めているようです。この日の米10年債利回りは一時1.35%まで低下しました。