今日の為替トレッキング

今日の一言

お金は持っているだけではなんの意味もない。大事なことは、お金を使って自分の価値を高めていくこと

Cheap Thrill

 BLS(米労働省労働統計局)が11月5日に発表した10月の雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が53.1万人増加し、失業率は0.2パーセントポイント低下して4.6%になりました。平均労働賃金は、前月比0.4%増、前年比4.9%増。

 NFPは今年の5月や6月に見られたような「月100万人増」には及びませんが、53.1万人というのは予想の中央値以上であり、これまで2ヵ月連続で予想を大きく下回ったことを考えると大健闘だったといえます。

 今年これまでの月平均雇用者増加者数は54.7万人。今回のNFPが55万人を超えることになれば、今月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で緩和縮小の加速(縮小幅の増額)が決定されることはほぼ確実。FRBは政策の最優先事項が雇用対策からインフレ対策へとシフトしたため、仮に50万人を下回ったとしても、緩和縮小がペースダウンする可能性は低い。

 雇用の内訳を見ると、レジャー部門の仕事が急増して16.4万人の雇用増。ビジネスサービスも10万人増加。平均労働賃金は、経済再開後の雇用が低賃金労働者に偏っていたことで下がっていましたが、観光地などのレジャー関連の仕事が大きく伸びたおかげで、上昇傾向を示しています。

 一方、平均週間労働時間は低下。企業が従業員の確保に苦労している状況では一般的に残業が増えるものですが、逆に下がっていたということは、労働不足の解消が進んでいるとの解釈ができます。

 パウエルFRB議長は、米雇用市場の労働参加率は回復すると考えています。労働参加率は横ばい状態が続いていますが、年代別に見ると明るい兆しが見えます。それはプライムエイジと呼ばれる25-54歳の働き盛り世代の労働参加率が上昇傾向を示していること。平均週間労働時間の低下と合わせると、中堅層の労働者が雇用市場に戻ってきていると推測できます。大量退職時代を迎えて構造的労働力不足を懸念しているFRBにとっては、心強いデータです。

 今夜の雇用統計の詳しい解説は「11月米雇用統計 詳細レポート」をご覧ください。

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、今月のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、緩和縮小の前倒し終了を議論すると明言しました。最優先事項を、雇用からインフレ対策にシフトするということで、FRBの金融政策は非常に重要な転換期を迎えることになります。

 今後発表される米経済が良好であるほど、FRBはインフレ退治の政策を強めていくでしょう。明日3日(金曜)は11月の雇用統計が発表されます。詳しい分析は「11月米雇用統計 詳細レポート」をご覧ください。

 10月の雇用統計で、平均労働賃金は前月比0.4%増、前年比4.9%増でした。この数ヵ月の賃金データは、新型コロナからの経済再開に伴い労働需要が増加するなかで、賃金の上昇圧力を示唆しています。ただし、最近の調査では、給料とインフレの関係は弱くなったことがわかっています。賃金が1%上昇してもインフレは0.04%しか上昇していません。

 19歳以上の米国人口のうち、働く意欲がある人の割合を示す「労働参加率」は、10月に61.6%とほとんど変化がなく、2020年6月以降、61.4%から61.7%の狭い範囲で推移しています。コロナ禍前の2020年2月よりも1.7ポイント低く、いまだにその差を埋められていない。

 労働参加率の低下は、米雇用市場の構造問題といわれていますが、それほど悲観する必要はないとの意見もあります。米国では多くのスタートアップ企業(まだ世に出ていない新たなビジネスモデルを開発する企業)が誕生して積極的に採用を増やしているのですが、この数字は雇用統計には正確に反映されていない。実際の労働参加率は雇用統計よりもっと高いといわれています。新しいビジネスで働く意欲を持つ人が増えていることは、米経済にとっては明るい材料です。