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ドル修正高局面の到来
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

ドル修正高局面の到来

2008/2/15
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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筆者は米国の景気が簡単に回復するなどとは思っていない。バブル相場が逆流しているのだから2008年はそれ相応の景気後退になると思われる。経済指標は「対前年比」で発表されるため、概ね今後1年は経済指標が好転することはないだろう。

現在のような景気後退局面では次から次へと悪いニュースが出てくる。サブプライムローン・CDS・モノライン問題で大騒ぎしている中で、今度は「オークションレートボンド(ARSs)」問題が浮上し、ここ一両日の債券市場の話題を独占した。この「オークションレートボンド(ARSs)」はオークションを通して定期的にリセットされる変動金利をもつ長期の債券で、半官半民のような公共機関の発行する長期債券のオークションを投資銀行(証券会社)が毎週開催し、最も安全なインベストとして年金、信託、富裕層が参入していたマーケットである。今週のオークションでは参加する投資家がいなくなり、5%の金利が突然20%まで跳ね上がった。

サブプライムローン問題から始まった金融不安はいたるところに飛び火している。基本的にサブプライムローン問題というのはグリーンスパン前FRB議長の負の遺産であるが、実体経済が悪化するに伴い新聞の論調もバーナンキFRB議長に対する風当たりも強まっている。WSJではバーナンキ議長の任期が短縮されるのではないかという観測記事も出ており、イエレン・サンフランシスコ連銀総裁などの後継候補の名前もとりあげられている。

このような米国経済のファンダメンタルズの悪化だけをみていると、投資家はドルや米国資産を買う気が起こらないだろう。しかし、欧州も日本も結局は米国頼みでなんの展望もないのである。14日に発表された欧州系の銀行の第4四半期業績も惨憺たる結果となっている。今後は米銀よりむしろ時価会計を採用していない欧州や日本の損失処理の対応の遅れが目立つことになるだろう。サブプライムローン問題の要諦はリスクが証券化され世界規模に拡大されていることにあるが、米国の金融機関が一番早くサブプライムローン関連商品を解体し証券化商品のアンワインド(巻き戻し)を進めていることを指摘しておきたい。

そもそも銀行の体力とはP/L(損益)ではなく資金量であるが、米銀にはすでに中東やアジアから数千億円規模の資金が断続的に注入されているのである。また米銀の収益の柱は「住宅ローン」と「クレジットカード」であるが、現在米国債10年と2年の長短スプレッドは1.8%(2月14日現在)に拡大中である。今後2%程度の長短スプレッドが2~3年続けば米銀の体力は回復していくだろう。「米国経済は良くも悪くもダイナミズムを持ちながら動いている」というのが重要なポイントである。日本のように経済や株価の低迷理由を米国経済やサブプライムローン問題に求め、無為無策の姿勢をとっている国は結局ジリ貧となるだろう。

現在、米国は政策総動員体制をとり問題解決にあたっている。今後は大幅利下げの効果も出てくるだろう。また5月から100億ドルの小切手がばらまかれる。これはGDPにダイレクトに反映する真水の対策である。さしずめ現在の米国経済の位相は、徹夜して疲れているが栄養ドリンクを飲んで一応元気があるといったところだ。利下げや財政出動のカンフル剤効果によって2008年の米国経済は悪いながらもなんとか持ちこたえるだろう。おそらく米国経済の本当の危機の到来は2009年以降であろう。なぜなら、徹夜した次の日は2倍疲れるからだ。ユンケルを飲んでもだめだろう。

今週の動きのなかで特筆すべきは米国の著名投資家のウォーレン・バフェット氏がモノラインの救済に手を上げたことである。ここ数年バフェット氏は米国内にはビジネスチャンスがないとして海外に投資の活路を求めてきた。しかし、米国での資産価格の下落により米国内でのビジネスを再開したのである。バフェット氏は「提案はあくまで金を稼ぐのが目的であって、ボランティアではない」と発言している。金融危機とは長期の投資家にとっては最大のビジネスチャンスなのである。14日に議会証言が予定されているNY州保険監督局長官は債券保証会社の地方債市場保険業務部門を分割させる提案を行うという。今後モノラインの約5割を占める地方債の問題は終息の方向に向かうのではないだろうか。

1月から100円割れ予測のオンパレードであったドル/円相場は、2月14日に三角保合いを上離れ108円超えを達成した。2007年6月22日の124 円14銭からの円高は2008年1月23日の104円98銭でいったんは終了したとの感触を持っている。ここまでの相場展開は筆者のモダンサイクルセオリーやパターン分析の予測と概ね合致してきた。相場の大局は円高方向であるが、パターン分析からみると今後3カ月程度はドル修正高の局面に入ると考えられる。105~114円の価格帯の中でのドル高基調となるだろう。(第2回「2008年ドル/円相場のイメージ」をご参照ください)

ドル/円(日足)支持・抵抗ポイント


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドルインデックス(週足) アナログモデルの推移
(1990年3月から1992年3月のチャートと2007年3月から2008年2月14日までのチャートを重ね合わせたもの)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

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