再びバリュー優位に戻ると考える3つの理由

 日本株でバリュー優位はまだ続くと予想しています。その理由は、以下2点です。

【1】バリュー・グロースのバリュエーション格差が拡大

 バリュー株の業績がとても好調です。私が3大割安株と呼んでいる金融株(8306三菱UFJ FGなど)・資源関連(8031三井物産9101日本郵船など)・製造業(5401日本製鉄など)は、世界景気回復・資源価格上昇・インフレの復活によって、今期の業績が大きく伸び、PERで見た評価はきわめて低く、配当利回りは高くなっています。

 一方、グロース株は利益に対して高い倍率で買われているので、PER評価は高めとなっています。

 2021年に入ってからバリュー優位が続いているとはいえ、それはごく短期的なことです。2017~2020年の4年、グロース株ばかりが上がり、バリュー株が低迷する時期が続いた結果、グロース株はやや割高、バリュー株はかなり割安になっていると判断しています。したがって、割安株相場がさらに続くと予想しています。

【2】「20世紀に逆戻り」の経済環境が来年にかけて続くと予想

 割安な株を買えば、すぐに見直されて株価が上昇するというわけではありません。「バリュートラップ(割安のワナ)」といって、割安株の割安がいつまでも修正されず、株価低迷が延々と続くこともあります。

  割安株が見直されるためには、なんらかのトリガー(きっかけ)が必要です。今年、そのトリガーがすでに起こっています。それが、来年にかけて続くと考えています。そのトリガーとは、インフレ復活に象徴される「20世紀に逆戻り」の経済環境です。

 今、米国などでリベンジ消費(コロナ禍でできなかった消費がまとめてドンと出てくること)が盛り上がっています。一時にドンと消費が出るため、「モノ」が一時的に不足しています。そのため、資源価格が上昇、インフレが復活、製造業の景況が急激に回復し、米長期金利が上昇しつつあります。

 この環境は、一言でいうと、「20世紀に逆戻り」です。かつて、割安株が活躍した、1980年代後半や、2000年代前半の環境に近くなっています。その結果、今年は、私が「3大割安株」と呼んでいる「金融株・資源関連株・製造業」の業績モメンタムが強い年になっています。一時的に、金融株・資源関連株・製造業が活躍する20世紀の経済環境に戻っています。
 過去に、日本株でバリュー株優位が長く続いた時は、いずれもインフレや金利が上昇した時でした。代表的なものに以下があります。

◆1980年代後半のバリュー相場
 円高と貿易戦争でグロース株(ハイテク株)がさえない中、内需中心にバブル景気が盛り上がり、バリュー株が活躍。

◆2000年代前半のバリュー相場
 金融株や重厚長大産業が、構造改革で復活。ブリックス(中国・インド・ブラジル・ロシア)と言われる新興国の成長加速で、資源価格が急騰、世界的にインフレ懸念が強まり、金利が上昇。

 インフレはいつまでも続かない、という予想の元に、世界の株式市場ではグロース株が一段と上昇し、バリュー株の上値が再び重くなってきました。私は、インフレは世間一般で思われているよりも長続きすると予想しています。つまり、20世紀に逆戻りの経済環境が今しばらく続くと思っています。

 それが理解されるようになると、PER評価がやや高くなっているグロース株の上値が重くなり、バリュー株が見直される流れが出ると思います。

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