7.    コストを低く抑える

 運用管理費用などのコストの節約が重要であることに関する指摘は、インデックスファンドを創りヴァンガード社を経営したボーグル氏の思想を継承するボーグルヘッズが強調して当然のポイントであり、内容には100%納得する。

 米国でも日本でも、投資家は全世界の株式に投資する1本のインデックスファンドを保有すれば、リスク資産の運用はそれでいい。投資アドバイザーにアドバイス手数料を払うのは、はっきり言って無駄だ。米国の投資家の多くに、自国の株式市場の調子が良かったので、アドバイザーに手数料を払いつつも満足していた面がありそうだ。

 筆者は、平均値でみて米国の投資家が日本の投資家よりも明らかに賢いとは思っていない。だが、両者の「運」には過去30年くらいあまりに大きな差があった。

 確定拠出年金の運用選択肢に、低コストなインデックスファンドがない場合についてのアドバイスが面白い。「ご自分の確定拠出年金で『一番ましな』ファンドを探すコツは、年間コストが最も低いものを探すことです」とある。

 日本では、2018年のつみたてNISAがきっかけとなってインデックスファンドの手数料引き下げ競争が進行し、投資家は、現在年間0.1〜0.2%のコストで十分運用できるようになった。

「自分にとって適切な額だけ、全世界株のインデックスファンドを持てばそれでいい!」ということを、再度強調しておこう。

8.    税金を抑える

 このテーマでは、国ごとの制度の差異の影響が大きいが、日本でも、iDeCoや各種のNISAなどの税制上有利な「運用の器」が整備されつつある(もう少し大きくなって欲しいが)。

 税制上有利な器(運用口座)に関する要点は、これを、(1)なるべく大きく利用する事と、(2)節税可能な運用口座に期待リターンが高い運用商品を集中する事、の2点に集約される。

9.    シンプルな投資

 ボーグルヘッズは、全世界の株式に投資するインデックスファンド1本でリスク資産の運用はいいと考えているようだ。筆者もそう思う。必要十分なリターン・リスク効率だ。しかし、金融業界は「そんなに簡単に割り切られては(手数料を稼げないので)たまらない」と考えてマーケティングの爪を研いでいるだろうから、油断してはならない。

 加えて、ボーグルヘッズの原則は、シンプルな投資のメリットについて、実に適切に説明しているので紹介したい。

「シンプルなポートフォリオには多くの利点があります。ほとんどの場合、コスト(税金を含む)を削減し、ポートフォリオの把握を容易にし、リバランスを簡素化し、税金の計算を簡素化し、事務処理と記録管理を削減し、必要に応じてポートフォリオを簡単に相続させることも出来ます。何よりもシンプルなポートフォリオを保有することで、家族や友人と過ごす時間を増やし、資産運用に費やす手間と時間を減らすことができます」。

 実に素晴らしいことではないだろうか。

 再び繰り返す。リスク資産の運用は、全世界株式のインデックスファンド「1本」でいい。他の選択肢を考えることは、時間・手間とたぶんコストの無駄になる。