4.    分散

 この項目の日本語訳は「分散」だが、英語の項目名は命令形の動詞なので、「分散せよ」あるいは「分散投資せよ」と訳す方がいいかも知れない。

 特定の株式やセクター(業種)に投資するのではなく、広く分散投資するべきだと述べており、米国では、アクティブファンドの平均よりもインデックスファンドの方が、運用成績が優れていることを指摘している。「平均的であること」は、悪いことではなく、実際にはよいことであって、運用成績を競うゲームでは原理的に有利なのだ。この原理は強力だ。

 加えて、現時点からみて将来成績がいいアクティブファンドを「選ぶ」ことがプロにとっても不可能であることの指摘が加えられていると、「アクティブファンドに投資しないことが経済合理的だ」ということの理由に対して、論理的な決着がつく。

 分散投資は、投資家自身が自分の選択で意図的に行う事ができる投資の改善手段だ。重要であることについて、何ら異論はない。

5.    マーケットタイミングを採らない

 ボーグル氏及びボーグルヘッズの教えの中で、たぶん最も有効で理解する価値があるのは、この項目ではないかと筆者は思っている。

 投資家は、自分にとって適切な大きさのリスク資産を抱えて、「上げ相場にも、下げ相場にも、全て付き合う」という方針を持って、その通りにすることがおそらく最善なのだ。

「株価が下落しそうな時には、株式の投資比率を下げる」といった運用をする主体は、年金運用などの世界では「マーケット・タイマー」と呼ばれるが、マーケット・タイマーは上手く行かないということがプロの運用の世界の大凡の常識だ。

 2020年のコロナ・ショック前後の相場がまさにそうであったように、その時々の情報と市場参加者の予想はその時々の株価に反映していると考えられる。株価が下がった時にも、株価が上がった時にも、普通の投資家に出来る最善の行動はそのまま株式を持ち続けることだった。

 そして、普通の投資家よりも明らかに優れている投資家は(たぶん)存在しない。普通の投資家は「誰かが自分よりも上手いことをやっているのではないか」と心配する必要はない。

6.    インデックスファンドを活用する

 ボーグルヘッズは、「株式市場全体に投資する最良且つ最低の保有コストにする方法は、インデックスファンドを保有することだ」と述べている。利用手段は従来型の投資信託(米国ならミューチュアルファンド)でもETF(上場型投資信託)でもいいという。

 現実の商品としてのインデックスファンドが全て完璧なわけではないが、相対比較的には、現在圧倒的に優れている。

 ボーグルヘッズは、米国の投資家に対して、1本のグローバル(全世界)株式ファンドは、完全に分散された株式ポートフォリオを所有する最も簡単な方法だと述べている。日本の投資家も同様に考えていいだろう。全世界株式に投資する投資信託(日本株を含む「オール・カントリー」と称するようなもの)、ほんの少しだけ評価が落ちるけれども日本株除きの世界株、新興国がない分もう少し残念だけれども先進国株式を対象とするインデックスファンドは、日本の投資家にとっても、米国の投資家にとっても、「十分に良い投資対象」だろう(細かな差にはこだわらなくていい)。S&P500種指数やTOPIX(東証株価指数)に単独で投資するよりも明白に優れている。

 ところで、ETFなのだが、日本では意外な活用方法がある。仮にどうしても対面証券で取引したい投資家の場合(読者の親御さんがそうかも知れない)、対面営業の窓口では手数料の安いインデックスファンドを扱っていない場合がある。こうした場合、ETFであれば東証の上場銘柄なので必ず取引が可能なはずなので、ETFを使ってインデックスファンドに投資するといい。もちろん、一回買ったら、将来お金が必要になって部分解約する時まで売らずに持ち続けるのが基本だ。