ここ1年の金価格と米国債券の推移

 ここ1年については、より短い米国債券(3年)でみたほうが逆相関の動きが顕著にみて取れるので、金価格と米国債券(3年)でみていきましょう。

出所:楽天証券ホームページ。マネーブレインが矢印を追記
出所:楽天証券ホームページ。マネーブレインが矢印を追記

 このグラフからも、「金利が上がると金価格が下がり、金利が下がると金価格が上がる」という動きが短期間の中で繰り返し起こっていることがみて取れます。

金利が上昇している中で、金価格も上昇する理由

 2020年8月に金価格がピークを迎えて以降、銀や銅などの金以外の貴金属や、原油や穀物といった商品価格が大きく上昇する中、金は下がっていきました。米国において消費者物価が上昇し、インフレになっている中、金は下がる展開となっていました。

 なぜ金以外の商品価格は上昇し、インフレになっているにもかかわらず、金は下がってきたのかをざっくりと捉えると、次の2つがぶつかり合って、(2)が強いために金価格は下落してきたものとみています。

(1)インフレ→金価格上昇
(2)インフレ→金利上昇→金利の付かない金は魅力に劣り下落

 マーケットを見ていると、金利が上昇すると瞬時に金価格が下落する動きをしていたので、(2)においてはプログラム化された売買がそれなりにあり、金融マーケットの中で特に起こっていることと捉えていましたが、10月以降も瞬時にはその動きが引き続きあるものの、10月をトータルでみると、明確に金利が上昇しているにもかかわらず、金価格が上昇しているという動きに転換してきています。

 何が起こっているのかというと、(2)から次の(3)に捉え方が変わってきているものとみています。

(3)インフレ→金利上昇→景気悪化→安全資産の金が上昇

 金融マーケットが(2)ではなく、(3)のように捉えてくると、(1)と(3)が相まって金が大きく上昇していくことが考えられるため、金に本格的な上昇の兆しが表れてきたとみているのです。

(3)の状態は過去を振り返ると1970年代に起こったことであり、景気の状態でいうと、残念ながら、景気悪化の中でインフレが進んでいくスタグフレーションという状態になります。実際に今回、スタグフレーションになるかは分かりませんが、金利上昇の中での金価格上昇は、マーケットがそれを感じ取っている表れともいえます。

「もし、スタグフレーションになったら」ということを考えておく必要がある時期に来ているのかもしれません。

 投資はあくまでも自己責任で。