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破綻再生企業への投資
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

破綻再生企業への投資

2010/10/15
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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今日、世界3位の化学メーカー、ライオンデルバゼル社(LYB)がNY証券取引所に再上場を果たしました。ライオンデルバゼル社は2009年1月、金融危機の影響を受けて経営破たん。今年5月に約180億ドルの負債を株式に転換する事によって連邦破産法11条から脱出、店頭市場での株式取引が再開されていました。我々が運用するファンドでは6月初旬、16ドル台に突入した場面を捉えて投資を実行、本日の上場株価27ドルにて売却する事が出来ました。

Drペッパーはお好き?(2010年6月16日)でご紹介した通り、我々が「良いビジネスを安く買う」機会として、スピンオフ(分離・独立)と並んで重視しているのが破綻再生企業への投資です。破綻再生企業は一般に、以下の理由で株式を割安で購入できる傾向があります。第一に、破綻した企業というのはイメージが良くありません。いくら債務を整理して再生してきたとはいえ、特に当初はそのような株式は投資家に敬遠されがちです。第二に、再上場して一定期間は証券会社等からの分析レポートなどの情報ソースに乏しく、一般の投資家が投資に踏み切りにくいという問題があります。

第三に、破綻した企業は通常、その前数年間は赤字を出しています。従って、再生してきて黒字が出ても、過去の累積赤字と相殺できるので、当面法人税を支払わなくてよい状態になります。同じ利益でも、税引き後利益は30-40%増になるという訳です。第四に、アメリカでは多くの場合、債務整理に債務の株式化(Debt to Equity Conversion)が利用されます。債権者に株やワラントが支給されるのですが、通常債権者は株式運用が本業ではありませんから、価値に拘わらず市場で投げてくるケースが散見されます。ライオンデルバゼル社の店頭取引が始まった直後から株価が下落したのも、このような債権者による投げが主因と見られます。

上記の通り破綻再生企業の株価が割安になる傾向に加え、そもそもライオンデルバゼル社破綻の要因は非常に分かりやすいものでした。もともとライオンデルバゼル社は2007年12月、買収合戦の末バゼル社がライオンデル社を買収してできた会社でした。ご存知の通り、当時はファンドによる企業買収真っ盛りの時でした。しかし、ビジネスには適正な負債比率というものがあります。負債が多過ぎると万一の際、危機を乗り越えられないし、負債が少なすぎても株主資本を有効に活用できません。その業界ごとに適正な負債比率があるものですが、ライオンデルバゼル社の場合は2007年の買収によって、負債が到底適正とは言えない水準にまで膨らんでしまっていたのです。

そこに運悪く訪れたのがリーマンショックです。恐らく2007年の無理な買収がなければ乗り越えられたのでしょうが、後の祭りでした。しかし今年に入って債務の株式化が進んだ事で債務は大幅に圧縮、化学メーカーとしては適正と見られる負債比率を回復する事が出来ました。我々の分析ではライオンデルバゼル社の実力はEBIDTA(利息・税金・償却等控除前の利益)35億ドル。業界平均のEBITDA倍率5.5倍から割り出した株価22~28ドルを適正と算出。真ん中である25ドルで50%の上昇が見込める16ドル台を購入価格と定めていました。我々のファンドでは通常、3~5年で少なくとも50%以上の上昇が見込める株式に投資する事にしています。しかし通常予定よりも大幅に遅れる事の多い再生、再上場がほぼ予定通りに進み、たった4カ月で株価が60%近く上昇した今回のようなケースは珍しく、この点は幸運以外の何物でもありません。

2008年の金融危機時にはこのように、少し無理をしただけで破綻に追い込まれる企業が続出しました。そしてその多くは本業には何ら問題はなく、負債さえ適正水準に戻れば比較的容易に再生できる企業ばかりです。金融危機から2年経った今、市場にはこのような企業が沢山見受けられ、破綻再生企業への投資は好環境にあると言えます。我々のファンドでも他に数件、破綻再生企業への投資を実行しており、当面パフォーマンス上昇に貢献してくれると見ています。

(2010年10月14日記)

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