原油増産と石油備蓄放出に注意

 今回のドル高・円安の背景の1つである原油上昇については、岸田首相は18日、産油国に増産の働きかけをするなどの対応をとるよう関係閣僚に指示しました。

 現在の日本経済の状況では、原油高と円安はダブルパンチで景気回復の足を引っ張り、衆院選挙にも影響が出てくることも予想されます。政府と日銀が一体となって状況打破のために動くシナリオも想定されます。

 また、米国も原油高によるガソリン価格の上昇や物価上昇は家計を直撃しています。バイデン政権にとっても、来年の中間選挙に向けて国民の負担増を和らげる必要があるため、動き始めています。

 物価上昇の要因の1つである供給不足に対して、13日、バイデン大統領はカリフォルニア州の主要港を24時間体制で稼動させると発表しました。

 そして原油高については、18日、サキ大統領報道官は、「(産油国に)問題解決に向けて努力するよう働きかけを続ける」と述べています。また、米メディアによると、SPR(米政府の戦略石油備蓄)から石油を放出する案があると報じています。

 18日に発表された中国の7-9月期GDP(国内総生産)は前年比+4.9%と5%を下回ってきました。不動産投資の抑制や電力の供給不足、厳格なコロナ対策などが影響し、10-12月期もさらに減速することが予想されています。

 中国経済の減速が続けば、世界経済の回復が遅れ、そこに金利高、原油高の影響が加われば、回復が遅れるだけでなく世界経済全体が減速してくる可能性が高まってきます。

 このようにドル/円にとって大きな節目である115円を取り巻く環境は、コロナ禍からの景気回復を目指している世界経済にとっても、大きな節目を迎えようとしています。

 金利高と原油高が世界経済回復の足かせにならないように、日米が政治的に産油国に対して働きかけていることには注意が必要です。産油国の増産や石油備蓄の放出など政治的に解決の方向に動けば、原油や金利は反転する可能性があるからです。