資源価格上昇が日本の企業業績押し上げ要素に

 あらゆる資源を輸入して使っている日本の景気にとって、資源価格の上昇はマイナスのはずです。ところが、現実には必ずしもそうではありません。日本の景気・企業業績にとって資源価格上昇に2つのプラス要素があります。

【1】今期の企業業績にとって資源価格の上昇はプラス

 短期的な話になりますが、今期の日本の企業業績にとって、資源価格の上昇はプラス要因です。日本企業は近年、世界中で資源権益を保有しています。総合商社や石油・鉱業・非鉄などがその代表です。こうした資源企業では資源価格上昇が直接利益を押し上げます。

 それだけではありません。輸入原料を使用する素材メーカーの利益も、資源価格が大きく上昇した直後には拡大します。「在庫評価益」が業績を押し上げます。

 鉄鋼・化学・石油精製などの素材産業では、いつでも一定の在庫(鉄鉱石・石炭・ナフサ・原油など)を保有しています。メーカー在庫に流通在庫も加えると、かなりの量が存在します。資源価格が上昇した直後は、安値在庫が残っている中で製品価格が上昇するので、鉄鋼・化学・石油など素材産業の業績は押し上げられます。

 逆に、資源価格が急落すると、日本の企業業績は短期的に悪化します。2016年3月期などは、資源安ショックで日本の企業業績が大きく悪化しました。資源権益の減損や、素材メーカーの在庫評価損が業績を悪化させます。

 このように、長い目で見ると、資源価格上昇は日本にネガティブでも、短期的には日本の企業業績を押し上げる要素となります。

【2】資源価格が上昇すると、省エネ環境技術にすぐれる日本企業は競争優位に

 日本は資源輸入国ですが、それでも資源価格上昇が日本企業に長期的にプラスとなる要素もあります。日本は1970年代以降、化石燃料を使うビジネスでの省エネ・環境技術で世界トップを走り続けてきたからです。資源価格が上昇すると、日本の自動車・機械産業などの競争優位が強まります。

 資源価格が上昇してから1年以上が経過し、安値在庫がなくなり、資源価格の上昇が末端(小売)価格まで上昇させるようになると、消費にネガティブな影響が及びます。通常、資源価格の上昇が小売価格に転嫁されるまでに1年以上のタイムラグがあります。すぐに表れる影響ではありません。

 ただし、それには例外があります。ガソリンの小売価格には原油上昇や円安効果がすぐに現れる仕組みとなっています。ガソリンだけはすぐに小売価格が上がるので、消費へのネガティブ効果もすぐに表れる可能性があります。