脱炭素がエネルギー価格高騰の一因に

 私は、今のインフレは需要けん引インフレの側面が強いと思っています。オイルショックのような供給側の要因でどんどん価格が上がっているわけではないからです。

 ただし、世界的な「脱炭素」が供給制約を生じ、エネルギー価格を必要以上に上昇させている面もあります。「脱炭素」が叫ばれる中、原油や石炭の増産や開発が行いにくくなっていることが、速やかな供給拡大を阻む要因となっています。その意味では少しコスト押し上げインフレの要素もあります。

ニューヨーク天然ガス先物(期近):2020年1月~2021年10月18日

 一部の悲観的なエコノミストは、今起こっているのは悪いインフレで、スタグフレーションが懸念されると言っています。それは杞憂と、私は思います。

 確かに、天然ガスや原油の想定外の急騰が不安を高めています。ただし、原油は世界的にかなりの供給余力があるので、時間とともに供給が増加し、いずれ価格は落ち着くと予想しています。天然ガスも、時間はかかりますが、いずれ供給が増えると思います。

 脱炭素・自然エネルギーの活用を長期的に進める中で、天然ガス・LNG(液化天然ガス)の生産は増やしていかなければならない現実に、人類はいずれ気づくと思います。調整電源【注】としてガス火力発電が重要な役割を果たすことは、明らかだからです。

【注】調整電源
 出力が安定しない自然エネルギー発電が増えると、出力変動や需要変動に合わせて機動的に出力を増減できる電源が必要になる。その役割を果たせるのは、現時点でガス火力発電しかない。