上昇率が大きかったのは2012年と2005年の衆院選
ということで、「選挙は買い」! …ほんとに、そう思いますか?
ここから定性的なエッセンスも混ぜていきます。読んでくださっている皆さま、それぞれで考えてみてください。未来の話なので現時点で答えはないし、誰にも正解は分からない状態です。いつもの相場を予想するときと同じですね。
たしかに、トラックレコードは優れています。ただ濃淡がありました。どういう選挙のときに株価は上がったのか? そこで選挙前後で大きく上がった、濃い衆院選相場の年を振り返ってみましょう。
合算した上昇率が大きかったのは、2012年と2005年の衆院選相場です。ここで何があったか? 何を争点にした選挙だったか? を思い出すと、見えてくるものがあります。
(1)2012年の場合
投資家の記憶に鮮烈に刻まれた、2012年12月の衆院選。当時与党だった民主党に対するうっぷんが市場で蓄積する中、当時の野田佳彦・元首相が「解散してもいい」と党首討論で発言しました。ここから始まったのが、伝説の「アベノミクス相場」でした。選挙に向けて株式市場は覚醒し、衆院選で自民党が圧勝すると上昇はさらに加速しました。
2012年12月衆院選の日経平均株価推移
外国人は変化を好むのか?
よく日本の証券関係者が、「外国人は変化を好む」と言います。これは言い得て妙で、変化のタイミングで外国人は日本株を爆買いしています。
2012年12月の衆院選で外国人は、衆院選の直前週に5,148億円(現物4,628億円、先物519億円)買い越し、さらに衆院選直後の週には7,671億円(現物7,019億円、先物652億円)という、この年の最大買い越しとなりました。
外国人に対して「日本株を買おう」という気にさせた衆院選。このときに「日本株は買いだ!」と熱狂したのは、政治に対する改革機運をかぎ取ったからでしょう。
大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の3つの政策を「3本の矢」と呼び、これをアベノミクスと安倍元首相本人が名付けました。このときは「改革」の気運にフィーバーしましたよね(この政策がよかったかどうかは別として)。こんな争点を持つ衆院選のときは、「選挙はストロングBUY!」だったようです。
(2)2005年の場合
続いて2005年の衆院選。このときの争点は……「郵政解散」でした。小泉純一郎・元首相が、郵政民営化法案の是非を争点にしました。
当時の記憶を、あるベテランの市場関係者は「夜に行われた小泉元首相による迫力ある演説に圧倒され、その直後から外国人買いが押し寄せた」と言っていました。こちらも、キーワードは「改革」。
2005年9月衆院選の日経平均株価推移
今思い出しても胸が熱くなる、高パフォーマンス化した衆院選相場。と、今を比べてどうでしょうか? あのときの熱狂、今回も起こると思いますか?
たしかに、トラックレコードだけ見れば「選挙は買い」に賭ける価値はありますが、それは、ただのイベントドリブン(選挙日を目がけ、短期での反対売買を前提にした売買)です。
一概に衆院選といっても、それぞれに違うストーリーがあります。高パフォーマンス衆院選相場のワンツーを振り返りましたが、ともに強材料となったキーワードは「改革」。
それでいえば、2009年も該当します。実際、選挙前だけでいえば、上昇率は2009年が最大でした。ここもある意味「改革」でした。このときは前任の安倍・福田両氏が体調不良で退陣した後の後任を任された麻生内閣。衆院選で過半数の議席を民主党に奪われ、政権交代が起きました。これも当時のムードとしては「改革」気運が高かったといえます。
では、今回はどうでしょう?
市場関係者が、よく言いますよね。「外国人は変化を好む」と「外国人は政治の安定を好む」。今回は、変化、すなわち「改革」気運は感じられるでしょうか。