スピード選挙に野党は候補者一本化で挑む

 世論調査や比例代表選の得票から浮かび上がる政党支持率と実際の議席数の間には、大きな差があります。2017年選挙に限らず、政党支持率のわずかな優劣が獲得議席数の大きな差として反映されるのが、小選挙区で議席の62%が決まる今の選挙制度です。

 このため、与野党は有権者への政策アピールに力を入れるだけでなく、選挙戦術にも知恵を絞っています。

 今回の特徴は野党陣営の候補者一本化と、首相就任から10日で解散し、解散から投票まで17日という現憲法下の最短で進むスピード選挙です。

 立憲民主党の枝野幸男代表は「220の選挙区で一騎打ちの構造がつくれた」と、共産党との共闘関係構築が進んだことを強調しています。ただ、立憲、共産両党は自衛隊を巡る憲法解釈など根本的な部分で違いが大きく、自民党は選挙のためだけの野合だとして批判しています。

 象徴的なのは、れいわ新選組の山本太郎代表。10月8日、東京8区に立候補して自民党元幹事長の石原伸晃氏に挑むと発表しましたが、立憲民主党の強い反発にあって10月16日には比例代表東京ブロックからの出馬へ方針転換しました。

 この間、山本氏には甘利明自民党幹事長が当選を重ねてきた神奈川13区での出馬観測も流れました。山本氏が選挙区の選定でつまずいたことを野党陣営の足並みの不一致と見るか、短期間での出馬撤回を野党共闘の成果と見るか、評価は開票結果が出るまでわかりません。

 世論調査では、自民党が優位です。共同通信社が10月16~17日に実施した全国電話世論調査(第1回トレンド調査)では、比例代表の投票先はトップの自民党が29.6%と2位の立憲民主党の9.7%に大差を付け、支持政党でも自民党が49.1%と報じられています。

自民党が作成?マル秘調査リポートの中身

 報道機関による世論調査とは別に、政党も独自にリサーチを重ねています。政官界の一部で回し読みされているのは自民党が作成したとみられる調査リポート。表紙には「衆議院議員選挙調査結果一覧」のタイトルがあり、右上にはマル秘の印があります。

 最新の調査が実施されたのは10月7~10日。4月と8月に続いて今年3回目です。

 内容は北海道から沖縄までの全選挙区の情勢です。有力な対抗候補者との支持率の差をA(15ポイント以上)、Aマイナス(10ポイント以上15ポイント未満)からD(マイナス15ポイント未満)まで10段階に分けて調査段階での優劣を判定しています。

 詳細は省きますが、たとえば東京都では25小選挙区のうち16選挙区で、前回調査に比べて自民党支持率がランクアップしています。

 ただ、前回調査が実施されたのは8月18~22日。この間、8月19日に東京都の新型コロナウイルス感染者が5,534人と過去最高を記録し、菅・前内閣のコロナ対策への風当たりが最も強かった時期でした。

 新型コロナ感染者の急減を踏まえると、政権を担う自民党の支持率上昇は当然かもしれません。