株式市場は自民党大勝を警戒

 ただ、相場は過去の例の通りには動かないものです。今回は自民党の「勝ち方」が問題になります。

 世論調査で支持率が低迷する岸田内閣ですが、政党支持率と実際の投票行動は一致しません。世論調査に回答しても投票に行かない人もいれば、特定の政党は支持していないが、地元の候補者を応援しているケースもあるからです。

 株式市場が警戒するのは自民党大勝のケースでしょう。これまで自民党大勝は理屈抜きで株高材料でした。2012年12月総選挙で安倍首相率いる自民党が圧勝し、アベノミクス相場がスタートしたのが好例です。

 今回、自民党大勝と株価上昇の直結を妨げるのは岸田氏の増税路線です。岸田氏は10月4日の記者会見で、金融所得課税の見直しを検討すると表明し、「1億円の壁」にも言及しました。株式で潤う超高額所得者の実質的な税負担率が低下する実態を踏まえたものです。

 株式の売却益や配当にかかる税率は現在一律20%ですが、これを引き上げるとなれば投資家の反発は必至です。「貯蓄から投資へ」の政策との整合性も揺らぎ、株価にはマイナス材料です。

 新聞・テレビではあまり話題になりませんが、岸田氏は総裁選公約で四半期開示制度の見直しを掲げました。

 情報開示は重要ですが、四半期業績にとらわれるばかりに企業経営者も投資家も中長期的な成長に関心が薄れてしまう弊害が指摘されるためです。情報開示の後退には投資家の反発が予想され、難しい判断を迫られるでしょう。