今日の為替トレッキング

今日の一言

心配事の80%は起こらない – ミシガン大学調査

Two of Hearts

 米国でコロナウイルスワクチンの接種が本格化する前、米経済再開の見通しがまったく不透明なときに、FRB(米連邦準備制度理事会)は、FOMC(連邦公開市場委員会)において、政策のフォワードガイダンスに関して重要な変更を行いました。2020年12月のことです。

 FOMCは、政策のフォワードガイダンスを従来の「今後数カ月」といったような、期間を定めた定量的なガイダンスから、最大雇用と物価安定の目標達成に向け「一段の著しい進展があるまで」という、数字では表わせない定性的なガイダンスへと修正しました。9月のFOMCでパウエル議長は、物価安定(インフレ率)に関しては「目標に達した」と認めました。では完全雇用はどうか?実はこの定義を巡ってFRB内部で見解の相違があるようです。

 パウエル議長は、最大雇用に向けた十分な「進展」があれば十分との意見ですが、ブレイナード理事は目標の「実現」を望んでいます。パウエル議長とブレイナード理事のどちらがFOMCメンバーに対してより説得力を持つかによって、緩和縮小の終了時期、そして利上げというFRBの重要政策の見通しが異なってきます。

 今週金曜日に9月雇用統計の発表があります。市場予想によると、失業率は5.1%に低下、NFP(非農業部門雇用者数)は50.0万人増加。2021年1月から8月までの期間、雇用者増は月平均で56万人増えています。今後もこのペースで増えていくとするならば、米国の雇用者数は、来年の5月には新型コロナで失われた分を全て回復することができます。順調に増えているからよしとしようじゃないかというのがパウエル議長。コロナ前に戻るまでは安心できないというのがブレイナード理事。

 ブレイナード理事は、パウエル議長が来年2月に再任されない場合に議長職を引き継ぐ公算が高いといわれています。ブレイナード理事はエコノミストで、自分の経済チームを持ち、米財務省出身でイエレン財務長官とは非常に親密な関係。米民主党急進派から強い支持を受け、女性を積極登用するバイデン政権にとっても適材。パウエル議長は、やや不利なようです。