決選投票は確実か?

 各種世論調査を踏まえた現時点での具体的な票読みですが、党員・党友票では河野氏が170~200票と大幅にリード。岸田氏95~110票、高市氏70~80票と続き、野田氏は30票未満と予想されます。

 一方、議員票は河野氏と岸田氏が110~120票程度で接戦が予想され、高市氏も75票前後と続き、野田氏は出馬表明の遅れが響いたのか20票台止まりで支持が広がらない見通しです。

 上記の数字をもとに河野氏の善戦シナリオを描くと、党員・党友から200票、国会議員から120票を得て合計320票。全764票の半数の382票には届きません。

 票読みのベースになるのは世論調査の結果と永田町からの情報です。今回も出所不明の投票予想などが出回ったようです。

 ただ、厄介なことに、偽情報もしばしば流れてきます。書類に「関係者限り」の注意書きがあったりもするのですが、出所不明なのでどこまで信用してよいか判断が難しいところです。

 議員秘書や政治担当記者が同じ書式の「投票予定候補一覧」を突き合わせてみたら、1カ所だけ数字が違っていたということもあります。ライバルを誤導するためか、情報ルートをあぶり出すためなのか知る由もありませんが。

 河野氏が頼みとするのは世論調査での高い人気です。自民党総裁選の後は衆院の任期満了が10月21日。衆議院を解散しなくても、総選挙はすぐにやってきます。自民党にとって総裁選は次の衆院選の「顔」を選ぶ選挙でもあります。

 このため、選挙基盤の弱い当選回数の少ない議員が、総選挙での自民党人気に期待して河野氏支持に傾くとの見方があります。

 ところが、ある永田町関係者は「若手議員票が河野氏へ大挙して流れる展開は考えにくい」と断言します。

 というのは、当選1~3回の自民党議員は223人いるのですが、このうち最大派閥で岸田氏か高市氏の支持が予想される細田派だけで65人もいて、岸田派を合わせると94人になります。

 党内第2派閥の麻生派は岸田、河野の両氏支持が「原則」で、高市氏も容認しています。しかし、重鎮の甘利明・党税制調査会長らが岸田氏支持を表明しており、河野氏には分が悪いようです。

 立候補を断念して河野氏支持を表明した石破茂・元幹事長率いる石破グループは1回生議員がゼロです。河野氏支持に回る若手議員が急増する余地は決して大きくないようです。

 このため、1回目では河野氏が過半数獲得を逃し、決戦投票にもつれ込むことがほぼ確実視されています。

 決選投票は河野氏と2位の岸田氏の対決が中心シナリオですが、世論調査のたびに支持を広げていく高市氏が河野氏と一騎打ちに臨む可能性もあります。決選投票では国会議員票382票、都道府県連票47票の合計429票です。

 国会議員はその場で決戦投票に臨み、都道府県連票は1回目に多数を得た候補者の票になります。岸田氏と高市氏の国会議員票だけで200票を超える可能性があり、河野氏は一転して劣勢になります。

 9月29日に次の自民党総裁が決まり、10月4日の臨時国会の首班指名で第100代首相が選出されます。新首相は喜びも束の間、コロナ対策と並行して、総選挙の陣頭指揮を執ることになります。

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