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自民党総裁選の投開票日は29日

 次期首相の座を争う自民党総裁選は9月23~26日のオンライン討論会を経て、29日の投開票を待つばかりです。

 各候補者の政策が出そろう一方、総裁レースは混戦模様を深めています。1回目の投票では勝者が決まらず、衆参両院の国会議員票で大半が決まる決戦投票が濃厚です。

 今回は岸田文雄・前政調会長、河野太郎・行政改革担当相、高市早苗・前総務相、野田聖子・幹事長代行(五十音順)が立候補。コロナ禍のため街頭演説が中止になったこともあり、インターネットやSNS(交流サイト)をフル活用したデジタル選挙戦が展開されてきました。

 選挙は1回目が国会議員票と党員・党友票が各382票で合計764票。1回目で過半数を得る候補者がいなければ、国会議員382票と都道府県連票47票の合計429票をめぐって決選投票が実施されます。

 新聞・テレビの世論調査では、河野氏がリードしていますが過半数を制するのは難しいとみられ、議員票に強いと報じられる岸田氏との決戦投票の可能性が高そうです。

オンライン討論会の成果は?

 26日までの4日連続のオンライン討論会では、議論が日に日にヒートアップしていきました。各候補とも譲れない主張がある一方で、世論の反応をみながら政策を微調整する様子もありました。

 この間、議員会館や有力議員の事務所は遅くまで明かりがついていました。ある議員事務所では秘書が連日、深夜まで残っていました。

「議員への連絡や秘書仲間との情報交換、地元後援会への支援のお願い、その合間に親しい記者からの電話などが途切れず、落ち着いて食事を取る時間もありません」と、こぼしていたのが印象的でした。

討論テーマ:エネルギー政策

 エネルギー政策については、持論の「脱原発」を封印した形の河野氏ですが、長期的な脱原発の基本姿勢は譲りませんでした。

 一方、高市氏は産業振興や電力の安定供給の観点から老朽原発の新型炉による建て替えの必要性を説き、原発推進の立場を一段とはっきりさせました。敵基地攻撃能力を保有すべきと主張する高市氏と意見が対立する野田氏も、原発推進では高市氏に同調しました。

討論テーマ:ロックダウン法制の整備

 一方、コロナ禍再燃時の都市封鎖(ロックダウン)法制の整備については、河野、高市の両氏は前向きでしたが、岸田氏は「厳しいロックダウンは私たちの国にはあまり適していない」と慎重な姿勢を示しました。

 岸田・高市連合が決選投票で河野氏を下した場合、ロックダウンをめぐって新政権内から不協和音が起きるかもしれません。

討論テーマ:財政赤字

 国民受けが悪いためか、各候補とも財政再建については全くと言っていいほど熱が入りません。財政赤字や将来の増税について具体的に議論するのは次の総選挙を考えると不利という判断からでしょう。

 ただ、国政選挙の開票が終わらないうちに自民党幹部が増税に言及したこともあるので、増税論議がこのまま棚上げされたままになると断言はできません。

決選投票は確実か?

 各種世論調査を踏まえた現時点での具体的な票読みですが、党員・党友票では河野氏が170~200票と大幅にリード。岸田氏95~110票、高市氏70~80票と続き、野田氏は30票未満と予想されます。

 一方、議員票は河野氏と岸田氏が110~120票程度で接戦が予想され、高市氏も75票前後と続き、野田氏は出馬表明の遅れが響いたのか20票台止まりで支持が広がらない見通しです。

 上記の数字をもとに河野氏の善戦シナリオを描くと、党員・党友から200票、国会議員から120票を得て合計320票。全764票の半数の382票には届きません。

 票読みのベースになるのは世論調査の結果と永田町からの情報です。今回も出所不明の投票予想などが出回ったようです。

 ただ、厄介なことに、偽情報もしばしば流れてきます。書類に「関係者限り」の注意書きがあったりもするのですが、出所不明なのでどこまで信用してよいか判断が難しいところです。

 議員秘書や政治担当記者が同じ書式の「投票予定候補一覧」を突き合わせてみたら、1カ所だけ数字が違っていたということもあります。ライバルを誤導するためか、情報ルートをあぶり出すためなのか知る由もありませんが。

 河野氏が頼みとするのは世論調査での高い人気です。自民党総裁選の後は衆院の任期満了が10月21日。衆議院を解散しなくても、総選挙はすぐにやってきます。自民党にとって総裁選は次の衆院選の「顔」を選ぶ選挙でもあります。

 このため、選挙基盤の弱い当選回数の少ない議員が、総選挙での自民党人気に期待して河野氏支持に傾くとの見方があります。

 ところが、ある永田町関係者は「若手議員票が河野氏へ大挙して流れる展開は考えにくい」と断言します。

 というのは、当選1~3回の自民党議員は223人いるのですが、このうち最大派閥で岸田氏か高市氏の支持が予想される細田派だけで65人もいて、岸田派を合わせると94人になります。

 党内第2派閥の麻生派は岸田、河野の両氏支持が「原則」で、高市氏も容認しています。しかし、重鎮の甘利明・党税制調査会長らが岸田氏支持を表明しており、河野氏には分が悪いようです。

 立候補を断念して河野氏支持を表明した石破茂・元幹事長率いる石破グループは1回生議員がゼロです。河野氏支持に回る若手議員が急増する余地は決して大きくないようです。

 このため、1回目では河野氏が過半数獲得を逃し、決戦投票にもつれ込むことがほぼ確実視されています。

 決選投票は河野氏と2位の岸田氏の対決が中心シナリオですが、世論調査のたびに支持を広げていく高市氏が河野氏と一騎打ちに臨む可能性もあります。決選投票では国会議員票382票、都道府県連票47票の合計429票です。

 国会議員はその場で決戦投票に臨み、都道府県連票は1回目に多数を得た候補者の票になります。岸田氏と高市氏の国会議員票だけで200票を超える可能性があり、河野氏は一転して劣勢になります。

 9月29日に次の自民党総裁が決まり、10月4日の臨時国会の首班指名で第100代首相が選出されます。新首相は喜びも束の間、コロナ対策と並行して、総選挙の陣頭指揮を執ることになります。

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