今日の為替トレッキング

今日の一言

故にことごとく用兵の害を知らざる者は、則ちことごとく用兵の利をも知ること能わざるなり(戦の損害を十分知りつくしていない者には、戦の利益も十分知りつくすことはできない)- 孫子

Rule The World

 FRB(米連邦準備制度理事会)は、かなり意図的に、そしてとても周到に、来るべき緩和縮小の開始に向けて、マーケットを誘導しようとしてきました。

 約2カ月前、クラリダFRB副議長は、米経済の先行きについて、「インフレ見通しのリスクは上向き」、「雇用市場は、2022年末までに最大雇用に達する」と、かなり強気の見解を示しました。

 FRBの金融政策のデュアルマンデート(2つの法的使命)は「物価の安定」と「完全雇用」。クラリダ副議長の予測によると、この両方ともが2022年中に達成可能。FRBの金融政策立案における指導者的立場にあるクラリダ議長の発言は単なるタカ派的見解というレベルを超えて重く受け止められました。

 その考えに沿う形で、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で、パウエルFRB議長は「量的緩和政策は2022年半ばで終了するのが妥当」であると発表しました。

 FRBは、コロナ対策で大きく膨らんでしまったバランスシートを安定した状態に戻すために、緩和縮小をできるだけ早く完了させる必要があると考えています。現在のFRBの量的緩和政策による債券購入額は毎月1,200億ドル。毎月150億ドルずつ削減していくとして、8ヵ月必要。2022年6月に終了するには、逆算すると緩和縮小は今年の11月から始まることになります。

 では利上げはいつから始まるのか?9月公表の最新ドットチャートによると、FOMCメンバー18名のうち9名が2022年の利上げを予想しています(1回が6名、2回が3名)。量的緩和終了の経済効果を測定するためにも、利上げ開始までにある程度の期間を持たせることが必要だとFRBは考えます。その期間が半年で充分なのかはまだわかりません。前回の利上げサイクルでは、量的緩和が終了したあと最初の利上げまでに1年2カ月の間隔がありました。