S&P500の一択はリスクが高い?全世界株式がベター 

――2021年8月に楽天証券においてETF(上場投資信託)を除く公募投資信託で最も積立設定金額が多かったはインデックスファンドは、S&P500への連動を目指したものです。※5

 ただ、日本人が長期で資産形成する手段として、米国というよその国の株価指数に連動する投資成果を目指す投資信託に資産を集中し過ぎることに対する懸念もあります。

代田 金融庁は「長期・積立・分散」を推進していますが、「長期・積立」についてはイメージしやすい一方で、「分散」についてもその効果をきちんと考えてみることは大切です。

 S&P500と全世界株式を比較して、どちらが分散されているかを常識的に考えれば、全世界株式の方が分散が効いているということになります。 

山崎 たとえば、分散投資をすることはリスクを減らす意味では重要ですが、分散の仕方によってはベターな場合とそうでない場合があります。

 これはトウシルのYouTubeチャンネルでも動画配信しましたが(「【資産形成】リスクによるインデックス選択」)、日本の株価指数TOPIX、日経平均株価、米国のS&P500、先進国株式、全世界株式(除く日本)、新興国株式に連動する円建てETF(上場投資信託)の過去5年の価格変動率から計算したリスクの値は、TOPIXが14.5、S&P500は17.0、世界株(除く日本)が16.2、先進国株式が16.6、日経平均株価が16.2、新興国株式が17.5でした。

 S&P500のリスクが過去5年で概算すると17あるのに対して、全世界株式(除く日本)は16.2です。大差ではありませんが、リスクは少ないほうがいいので、16.2の全世界株式(除く日本)のほうが投資対象としては確かにいい。

 どの指数を投資対象にするか選ぶときは、やはり、単独の国の指数より、複数の国を組み合わせるか、あるいは全世界株式(除く日本)のほうがいいでしょう。

 米国株のパフォーマンスは過去30年ぐらい、ずっとよかったという実績はありますが、過去のリターンがそのまま将来の期待リターンになることはない。

 にもかかわらず、多くの人々は「米国の多国籍企業は世界でビジネスをやっているから米国株を保有していれば世界全体に投資しているのと同じ」だとか「かのウォーレン・バフェットはS&P500で妻に遺産を渡すらしい」とか「米国の企業は株主本位の経営をしている」と勇ましいことを言っています。

 しかし、株価指数というのは、ある国のもの一択ではなく、複数の国のものを広く取り込んでいくほうが、分散投資の観点では優れています。インデックスファンド1本に投資するなら、S&P500より全世界株式に投資するほうが明らかにベターです。

 

代田 S&P500に連動するインデックスファンドは、弊社でも「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の資金流入が顕著です。※6

 S&P500のみを推奨する方々は「過去のパフォーマンスがいい」「米国企業は世界的規模でビジネスをしている」「米国のような、よくわかっている国に投資するほうがいい」「米国は今後も成長が見込める」といった理由で薦めています。

 しかし、米国における年金運用をみても、「米ドルベースで生活しているので、米国株だけ買っておけばいいんじゃないか」という状況は10年以上前に終わっていて、最近は米国でさえも、米国株一辺倒ではなく、グローバル分散投資が当たり前の時代になっています。

山崎 ハーバード大学の年金基金が、実は東芝の大株主だったという時代です。

代田 米国ですら、S&P500一辺倒とは言わなくなっている時代に、日本の個人投資家の投資対象がS&P500だけでいいというのは、やや踏み込みすぎかもしれません。

※5 楽天証券取り扱いの公募投資信託(ETFを除く)積立ランキング(設定金額)。対象期間:2021年8月1日~2021年8月31日
※6 
2021年8月時点

【スペシャル対談】
三菱UFJ国際投信代田秀雄 
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楽天証券経済研究所山崎元

【前編】資産運用の最適解とは?『ほったらかし投資』について考える
【中編】長期投資の真の効用と「S&P500」一極集中問題
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<プロフィール>

代田秀雄
三菱UFJ国際投信 常務取締役兼商品マーケティング部門長。現・三菱UFJ信託銀行で30年間、年金運用に従事したあと、現・三菱UFJ国際投信で「MAXIS」ブランドのETF立ち上げに従事。2009年にはネット向けeMAXISシリーズ組成に取り組み、2017年2月に立ち上げたeMAXIS Slimシリーズは純資産総額1.5兆円を突破している(2021年9月1日時点)

山崎元
楽天証券経済研究所 客員研究員。マイベンチマーク代表。東京大学を卒業後、三菱商事に入社。野村投信、住友信託、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など計12回の転職を経て現職。経済評論家。専門分野は資産運用、マクロ経済など。
最新監修ムックは『山崎元のほったらかし投資 資産運用の大正解 (TJMOOK) 』(宝島社)

 

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)のリスクと
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員


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