今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」「日本」「インド」「中国」を選択した人の割合に注目します。

 この質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で「アメリカ」「日本」「インド」「中国」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 8月の調査(8月30日~9月1日に実施)では、「アメリカ」「日本」「インド」「中国」を選択した人の割合は、それぞれ、70.32%、33.99%、27.58%、10.42%でした。全体の順位は、1位、2位、3位、5位でした。(4位は東南アジアで15.71%)

 2020年3月から2021年2月ごろまで、主要国が金融緩和を強化したことで、新型コロナウイルスの感染拡大によって受けた経済的ダメージが回復する期待が浮上し、4つの国いずれも、「今後、投資をしてみたい国(地域)」として選考される度合いが増しました。

 また、中国は、2020年9月ごろから同年年末にかけて、比較的、コロナの感染拡大の抑え込みに成功していたことで、世界の景気回復を先導するとの期待が浮上して、他の国よりも大きく上昇しました。

 その後は、ワクチンの流通が加速したアメリカが上昇し、そうでない日本が下落して両国の差が拡大したり、再び感染拡大が目立ち始めて中国が下落したり、集団免疫が獲得できたとの見方が浮上してインドが上昇したりしました。

 アメリカについては、この数カ月、物価が上昇傾向にあることや、雇用情勢がコロナ禍の最悪期を脱したとの見方から、段階的な金融緩和の縮小(テーパリング)の議論がはじまりました。

 このような動きを受け、金融緩和によって支えられてきた市場に不安感が生じ、同国を選択する人の割合が頭打ちとなっています。

 振り返ってみると、2020年3月から2021年8月までの当該設問の回答状況は、米国においては同国の金融政策に、米国をはじめとした主要国においては新型コロナウイルスに関わる情勢に影響を受けてきたと言えそうです。

 コロナに関わる情勢が良好なものになるという見方が強まれば(感染者減少、ワクチン普及、集団免疫獲得観測など)、その国を「今後投資をしてみたい」と考える人の割合が上昇し、逆にコロナに関わる情勢が悪化するという見方が強まれば(感染者増加、ワクチン普及せず)、その国を「今後投資をしてみたい」と考える人の割合が低下する、という具合です。

 引き続き、米国の金融政策と新型コロナウイルスに関わる情勢と、当該設問の回答状況に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年8月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 52.85% △ 1.78%
外国株式 48.97% ▼ 0.05%
投資信託 38.86% ▼ 1.52%
ETF 31.52% ▼ 2.17%
REIT 13.95% ▼ 0.89%
国内債券 4.07% ▼ 0.37%
海外債券 6.46% ▼ 0.60%
FX(外国為替証拠金取引) 7.37% △ 0.33%
金やプラチナ地金 14.33% △ 0.98%
金先物取引 2.57% ▼ 0.01%
原油先物取引 1.86% △ 0.20%
その他の商品先物 1.78% △ 0.03%
特になし 7.75% △ 0.05%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年8月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 33.99% △ 1.24%
アメリカ 70.32% ▼ 2.50%
ユーロ圏 8.06% ▼ 0.86%
オセアニア 4.24% △ 0.20%
中国 10.42% ▼ 3.69%
ブラジル 2.34% ▼ 0.41%
ロシア 1.34% ▼ 0.26%
インド 27.58% △ 3.91%
東南アジア 15.71% ▼ 0.85%
中南米(ブラジル除く) 1.94% △ 0.09%
東欧 1.38% ▼ 0.27%
アフリカ 5.66% ▼ 1.50%
特になし 6.91% △ 1.52%
出所:楽天DIのデータより筆者作成