為替DI:9月のドル/円、個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。
DIは「強さ」ではなく「多さ」を測ります。DIは円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありません。しかし,アンケートに個人投資家の相場観が正確に反映されているならば、DIの「多さ」は「強さ」に関係することになります。
「9月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、個人投資家5,123人のうちの35%(1,808人)が、9月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています。先月(37%)に比べると、円安見通しは2ポイント減りました。
「ドル安/円高」予想は21%(1,084人)。先月(23%)に比べると、円高見通しは2ポイント減りました。
44%(2,321人)は、「動かない(わからない)」でした。
米利上げはいつ始まる?
FRBは、かなり意図的に、しかしとても賢明に、来るべき緩和縮小の開始に向けて、マーケットを誘導しようとしています。
FRBの金融政策の指導者的存在であるクラリダFRB副議長は、「インフレ見通しのリスクは上向き」で、「雇用市場は,2022年末までに最大雇用に達する」と、かなり強気の見解を示しました。
FRBの金融政策のデュアルマンデート(2つの法的使命)は「物価の安定」と「完全雇用」ですが、クラリダ副議長の予測によると、両方とも2022年中に達成が可能ということです。つまり、FRBの量的緩和政策は2022年で終了するという意味になります。
緩和縮小の次の段階は利上げ。「マーケットは利上げに備えて準備を始めるように」というのが、クラリダ副議長からのメッセージです。たった1年半前には、FRBの金利がコロナ前に戻るのは40年後という予想がまかり通っていたことを考えると、「2023年利上げ」は非常に大きな衝撃でした。
クラリダ副議長は、コロナ対策で大きく膨らんだFRBのバランスシートを安定した状態に戻すために、量的緩和政策をできるだけ早く終わらせる必要があると考えています。
現在のFRBの量的緩和政策による債券購入額は毎月1,200億ドル。2022年1月から緩和縮小を開始するとして、FOMC(米連邦公開市場委員会)会合ごとに債券購入額を150億ドルずつ削減していく予定。来年のFOMC会合は8回あるので、緩和縮小の完了時期は、2022年12月ということになります。
では利上げはいつから始まるのか? クラリダ副議長は2023年からの利上げを予想しています。利上げは緩和縮小が完了した直後から始まることも考えられますが、FRBは緩和縮小完了から利上げ開始までに、ある程度の余裕を持たせることが必要と考えています。
ということは、2023年から利上げサイクルを始めるならば、緩和縮小をできるだけ早く、そして減額幅を大きくすることが必要になってきます。これがFRBタカ派の主張です。一方、パウエルFRB議長はハト派で、緩和縮小の妥当性は認めていますが、利上げに対しては慎重。
利上げは、FRBのデュアルマンデートである「物価の安定」と「完全雇用」の両方が達成されて初めて行うことについては、タカ派もハト派も同じ意見。しかし、9月FOMC前「最後の」雇用統計の非農業部門雇用者の増加数は予想よりかなり悪く、完全雇用の達成の日は遠のき、利上げ開始時期は再び不透明になっています。
楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の25%が9月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想しています。ユーロ高見通しは、先月(25%)と変わらず。
「ユーロ安/円高」予想は16%。先月(19%)に比べると、ユーロ安見通しは3ポイント減りました。残り59%は「動かない(わからない)」でした。
楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の22%が9月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想しています。豪ドル高見通しは、先月(23%)に比べると1ポイント減りました。
「豪ドル安/円高」予想は17%で、先月(20%)に比べると、豪ドル安見通しは3ポイント減りました。残り61%は「動かない(わからない)」でした。