日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「出遅れ修正の狼煙か?」

 今回調査における日経平均見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス8.63、3カ月先はプラス6.98となりました。前回調査がそれぞれマイナス9.57、マイナス0.56でしたので、両者ともにDIの値を改善させた格好です。

 調査期間(8月30日~9月1日)中の日経平均が上昇基調だったことも、今回の結果に反映されたと思われますが、その割には1カ月先DIの改善の度合いが小幅にとどまっている印象でもあります。

 実際に、回答の内訳グラフをみると、1カ月先の強気派は18.93%となっていますが、実は前回(20.31%)から割合を低下させています。結果的にDIの値は改善しましたが、弱気派の減少幅(前回の29.88%から今回の27.57%)の方が強気派よりも大きかったことが寄与した格好です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 確かに、日経平均は月末にかけて株価が大きく切り返してきましたが、今回の調査期間は、前の週に年初来安値を更新したばかりというタイミングでもあったため、慎重な姿勢が表れたのかもしれません。

 その一方、3カ月先については、強気派が32.96%(前回は28.84%)、弱気派が25.97%(同29.40%)となっていて、改善の中身はしっかりしていると言えそうです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 国内株市場は9月に入ってからも上昇を続け、日経平均は2万9,000円の節目を回復してきました。テクニカル分析的にも、25日・75日・200日移動平均線を9月相場の初日の取引も一段高となって、75日と200日の移動平均線も次々と上抜けています。

 こうした株価上昇の背景には、米ジャクソンホール会合(カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)でのパウエルFRB議長の講演内容が、テーパリングの年内開始に言及したものの、その開始時期や利上げについての示唆がなかったことで無難に通過し、米株市場が上昇で反応した流れをきっかけに、日本株も上昇に転じました。

 さらに、にわかに動き出した国内政治動向によって、政局変化への期待や、「選挙期間の株価は高い」というアノマリーに支えられた買い、そして、月末株安を見越した売りポジションの解消、法人企業景気予測調査で企業の景況感が改善傾向となったこと、そして、以前より日本株の出遅れ感を指摘する見方が根強かったことも月初の株高の追い風となっています。

 こうした日本株の復調が本格的な「見直し買い」なのかどうかについて、まだ確信を持つ段階ではないと思いますが、少なくとも、長く続いた月末株安のジンクスを打ち破ったことは、日経平均が2月に高値をつけてから約半年続いた下落トレンド終焉の狼煙となる可能性があります。

 とはいえ、ジャクソンホール会合の無難な通過によって、金融政策への警戒が後退したように見える米株市場も注意が必要かもしれません。

 そもそも、今回のパウエルFRB議長の講演は、「テーパリングを開始するよ」というメッセージをマーケットに対してうまく告知できた段階に過ぎません。

 次の焦点は、経済指標などの米景況感をにらみながら、テーパリングの開始時期がいつになるのか、どのくらいのペースで縮小していくのかへと移行していきます。

 縮小のペースが判明すれば、テーパリングの終了時期についても大体の目安がつきますので、その後に控える利上げの開始時期も意識されることになります。

 そのため、金融市場が米国の金融政策を材料に動意付く場面が再び訪れることが想定されます。足元の株式市場は、それまでに「どこまで値を伸ばせるか?」を試している局面なのかもしれません。