セクターコメント:半導体製造装置

1.2017年3月の日本製半導体製造装置受注額は前年比40.1%増

2017年4月19日、日本半導体製造装置協会は、2017年3月の日本製半導体製造装置の受注額、販売額、BBレシオ(各々3カ月移動平均)を公表しました。それによると、3月の受注額は1813億7000万円(前年比40.1%増、前月比2.5%減)、販売額は1623億3100万円(前年比39.5%増、前月比18.3%増)、BBレシオ(受注額÷販売額)は1.12でした。

BBレシオは2月の1.36から低下しましたが、年度末の3月は例年販売額が増えますので、3月のBBレシオ低下は気にする必要はないと思われます。

むしろ重要なのは、受注の動きです。2016年12月はサムスンから3DNANDフラッシュメモリの大型設備投資の前倒し発注があったため、前工程の大手、東京エレクトロン(コータ/デベロッパ、プラズマエッチング装置など)やSCREENホールディングス(ウェハ洗浄装置など)は、2016年10-12月期の受注が好調でした。これらの動きは、楽天証券投資WEEKLY2017年3月3日号3月31日号で取り上げています。

2017年3月の受注高で重要なのは、好調だった昨年12月の受注額が(3カ月移動平均を算出するため)1月、2月の受注額に反映されているのに対して、3月の受注数字には1月、2月の受注は反映されていますが、昨年12月の影響はなくなっているということです。にもかかわらず3月は、前月比で2.5%減となっただけの高水準な受注額でした。これは2017年1-3月期も高水準な半導体設備投資が続いていたことを意味しています。

グラフ1 日本の半導体製造装置:受注額と販売額

(単位:百万円、日本製装置の3カ月平均、出所:日本半導体製造装置協会より楽天証券作成)

グラフ2 日本の半導体製造装置:BBレシオ

(単位:倍、BBレシオは受注額÷販売額、受注、販売の3カ月移動平均より計算、出所:日本半導体製造装置協会より楽天証券作成、注:BBレシオは1を上回れば好況、1を下回れば不況と見る)

表1 日本製半導体製造装置の受注額と販売額

2.半導体製造装置メーカーの決算発表スケジュールと注目決算

3月の業界の受注額が確認できたところで、2017年3月期通期決算の決算発表が始まります。主な半導体製造装置メーカーの決算発表スケジュールは以下のようになります。

4月27日
アドバンテスト
4月28日
東京エレクトロン、レーザーテック(2017年6月期3Q)
5月9日
SCREENホールディングス
5月10日
ディスコ
5月11日
ニコン
5月12日
東京精密(ウェハプローバ)、新川(ボンダー)、アルバック(2017年6月期3Q、スパッタリング装置、
真空蒸着装置など)

半導体設備投資の70~80%が前工程への投資であることから、注目銘柄はまず東京エレクトロン、SCREENホールディングスのような前工程装置メーカーになります。特に東京エレクトロンは、前工程装置の品揃えが豊富な世界4位、日本で1位の半導体製造装置メーカーです。決算発表でどのような見通しを示すのかが注目されます。

また、線幅5ナノの先端分野の投資が2018年頃から始まると言われています。各種検査装置の需要にも期待できそうです。レーザーテックの決算に注目したいと思います。

表2 半導体製造装置の主要製品市場シェア

3.後工程にも目を向けたい

ディスコ

半導体出荷が増加し、半導体工場の稼働率が上昇していると思われることから、前工程だけでなく、後工程の更新、新設も重要になってくると思われます。後工程の関連銘柄では、アドバンテストとディスコが重要です。アドバンテストは以前取り上げたので、今回はディスコを取り上げます。

ディスコは、前工程でシリコンウェハ上に回路を書き込んだ後、後工程でそのシリコンウェハを小さいチップに切断する時に使う「ダイサー」で世界シェア約80%の最大手です。前工程でシリコンウェハの底を削って平らにするのに使う「グラインダー」も手掛けていますが、ダイサーの比重が大きいです。競合相手は東京精密などです。

ディスコはダイサー装置とダイシングブレード(ウェハを切断する時に使う刃、消耗品)の両方を販売しています。ダイサー装置の採算も良いですが、ダイシングブレードの採算はそれ以上に良いです。また、半導体設備投資が低迷しダイサー装置の需要が減少する時期でも、半導体工場が動いている限りダイシングブレードは必要になります。このダイシングブレードがディスコの重要な収益源です。

また、半導体会社の中でも後工程の専門業者は、常に新品の製造装置を揃えて受注活動する傾向があります。従って、今のように半導体設備投資が盛り上がっている時は、前工程が先になりますが、後工程のダイサー装置も伸びる傾向があります。ちなみに、世界の半導体工場(後工程工場)でディスコのダイサーを使っていない工場はほとんどないと思われます。

グラフ3は、ディスコが各四半期の冒頭に前四半期の単独売上高(個別売上高)を速報しているものをグラフ化したものです。2017年3月期3Qまではゆっくりした動きが続いていましたが、4Qに前年比15.0%増、前四半期比33.2%増と目立つ増え方をしました。この動きが持続するのかどうかが注目されます。

今の受注、売り上げトレンドが波を描きながらも続けば、2018年3月期は10%以上の増収率、20%以上の営業増益率が期待できそうです。投資妙味を感じます。

グラフ3 ディスコ単独売上高

(単位:百万円、出所:ディスコプレスリリースより楽天証券作成)

表3 ディスコの業績

銘柄コメント:ソニー

1.楽天証券ではソニーのアナリストレポートを作成、目標株価レンジ4,800~5,000円、レーティングA。

楽天証券は4月21日付けでソニーのアナリストレポートを発行しました。株価レーティングは「A」、今後1年間の目標株価レンジは4,800~5,000円です。詳細はレポートをお読みください。

4月21日付けで、ソニーは2017年3月期業績見通しを上方修正しました。内容は表4の通りです。金融部門、半導体部門中心に費用の減少があった模様です。営業利益は前回予想の2,400億円から2,850億円に上方修正されました。なお、4月28日に2017年3月期通期決算を発表する予定です。

楽天証券の業績予想と部門別営業利益の予想は表4、5の通りです。2017年3月期1Qに熊本地震によるダメージが半導体(イメージセンサ)、カメラなどにありましたが、2Qから立ち直っています。

表4 ソニーの業績

表5 ソニーのセグメント別営業利益:通期ベース

2.音楽部門も重要になってきた

音楽部門はもともと安定収益部門ですが、特に同部門の日本部門(ソニー・ミュージックエンタテインメント・ジャパン、以下SMEJ)が重要になっています。SMEJはレコード制作だけでなく、ライブ興業、アーティストマネジメント、アニメ、ゲーム、ライブハウス経営など幅広い事業展開を行っています。

SMEJのアニメ子会社「アニプレックス」がスマホゲーム「Fate/Grand Order」を配信しており(製作は別会社)、このスマホゲームが音楽部門の重要事業になっています。また、「Fate」に次ぐ第2弾として「マギアレコード」が今春配信開始される予定です。

レコード制作とアーティストマネジメントでも変化があります。SMEJにとって「西野カナ」「乃木坂46」が有力なアーティストですが、2017年に入って「宇多田ヒカル」が移籍してきました(レコード制作、アーティストマネジメントともにSMEJになった)。更に、2016年4月にレコードデビューした「欅坂46」の人気が急上昇しており、これまで発売したシングル4作が好調に売れています。今後数年で急成長する可能性があります。人気アイドルグループを擁することは日本の音楽ビジネスでは重要なのです。

投資妙味を感じます。