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銘柄コメント:東芝、任天堂
今中 能夫
楽天証券投資weekly セクター・投資テーマ編
毎週金曜日夕方掲載。楽天証券経済研究所チーフアナリスト 今中能夫の、今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。注目セクターと投資テーマに重点を置いて、相場と銘柄を…

銘柄コメント:東芝、任天堂

2017/4/14
2017年4月11日、東芝は2017年3月期1-3Q(2016年4-12月期)累計決算を公表しました。それによれば、最終赤字は5325億円の大赤字となり、12月末の株主資本は2257億円の債務超過となりました(表1)。純資産は299億円のプラスですが、この規模の企業としては極めて低水準となりました。
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東芝(6502)任天堂(7974)

東芝

1.東芝は2017年3月期3Q決算を公表した。ただし監査法人の意見表明なし。

2017年4月11日、東芝は2017年3月期1-3Q(2016年4-12月期)累計決算を公表しました。それによれば、最終赤字は5325億円の大赤字となり、12月末の株主資本は2257億円の債務超過となりました(表1)。純資産は299億円のプラスですが、この規模の企業としては極めて低水準となりました。2017年3月期3Q(2016年10-12月期)では、6478億円の最終赤字となりました(表3)。

ただし、決算とは言っても、東芝の監査を行うPwCあらた有限責任監査法人が監査意見を表明しない「意見不表明」とする異例の事態となりました。監査法人の意見表明には、「無限定適正意見」「限定付適正意見」「不適正意見」「意見不表明」の4段階があります。財務状況に問題のない大半の企業は「無限定適正意見」ですが、一部問題がある企業は「限定付適正意見」となります。重要な不適正箇所がある場合は「不適正意見」となり、重要な監査手続が実施できず十分な監査証拠が入手できない場合で、その影響が財務諸表等全体に対して重要な場合には「意見不表明」になります。

また、継続事業の前提に疑義がある旨、決算書に注記がなされました。

監査法人が意見不表明としたのは、3月29日にアメリカ連邦倒産法第11章(以下チャプター11(イレブン))を申請したウェスチングハウス(WH)の会計処理に問題があると思われるからです。WHの一部経営者が従業員へ過度な圧力をかけたことが判明しています。これについて、東芝の監査委員会の調査では、2016年12月下旬以降にこれらの行為があったと報告していますが、監査法人側は過去(2017年3月期1-3Q)にもあったのではないかとして追加調査が必要としている模様です。これについては、会社側はないことの証明をしなければならないとしてこれ以上の調査はしないとし、監査法人と会社側の意見が対立しています。

会社側は早期に3Qの監査意見を受取り、5月中に2017年3月期通期の決算発表をしたいとしていますが、PwCあらたから3Q決算の監査意見をいつ受領できるのか、本決算の監査意見も受領できるのか、今のところ定かではありません。会社側は、監査法人の交代も示唆していますが、引き受ける監査法人があるのか、交代した場合に3Q決算に続いて通期決算が5月までに間に合うのかは不透明です。

なお、2017年3月期の本決算には、ウェスチングハウスのチャプター11申請の影響を織り込むことになります。

表1 東芝の2017年3月期3Q決算

表2 東芝のセグメント別営業損益

表3 東芝の業績:四半期ベースと通期ベース

2.東芝メモリは業績好調

一方、2017年3月期3Q決算発表で、監査意見不表明ではありますが、個別部門の内容が明らかになりました。それによると、ストレージ&デバイスソリューション部門のメモリ事業(4月1日以降東芝メモリとして子会社化)は2017年3月期1-3Q累計の営業利益が1022億円となりました(前年同期は934億円)。

四半期ベースで見ると(表4)、東芝メモリ事業の営業利益は、2016年3月期3Qの153億円から2017年3月期3Q521億円へ拡大しています。この要因は、NAND型フラッシュメモリの需要増加、市況上昇、3DNANDの歩留まり上昇による3DNAND比率の上昇(2017年3月期3Q10-20%、2018年3月期は50%にする計画)です。3DNANDは縦方向に回路を積み上げていくためフラッシュメモリの集積度が増します。3QのNAND型フラッシュメモリの出荷ビット数は前年比35%増、単価は2Q比6%上昇しました。会社側は少なくとも2018年3月期上期までは好調と考えています。

今の高い市況がいつまで続くのか不透明ですが、仮に2018年3月期一杯続くとすると、東芝メモリの営業利益は2017年3月期約1700億円、2018年3月期2400億円程度と試算されます。

2018年3月期営業利益2400億円が達成可能とすると、税率を約35%と仮定して最終利益1500~1600億円と仮定し、これをPER15倍で評価すると、東芝メモリの想定時価総額は2.2~2.4兆円となります。報道によれば、東芝は2兆円以上での売却を希望しており、台湾のホンハイ(鴻海精密工業)は3兆円まで出す意向を示したといわれていますが、2兆円以上の数字でも高いとは言えないと思われます。

表4 東芝メモリ事業の損益

表5 NAND型フラッシュメモリの売上高と市場シェア

グラフ1 NAND型フラッシュメモリの市況

(単位:ドル、多値品、出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成)

3.東芝メモリ売却に対してウェスタン・デジタルから物言いが付いた

報道によると、東芝は3月末に東芝メモリ売却に関する1次入札を締め切りました。1次入札を通過したのは、ブロードコム(半導体大手でファブレス会社。シンガポールとアメリカに本社がある。通信用半導体大手の旧ブロードコムを電子部品大手のアバゴテクノロジーズが2016年2月に買収して新生ブロードコムになった)と米投資ファンドのシルバーレイクの連合、ウェスタン・デジタル、SKハイニックス、ホンハイ(鴻海精密工業)の4社です。このうち、ブロードコム+シルバーレイク連合が最有力で、1次入札で約2.5兆円の買収額を提示した模様です。また、ホンハイは2兆円を提示し、更に3兆円に引き上げる意向を示しているということです。

一方で、東芝とNAND型フラッシュメモリで提携関係にあるウェスタン・デジタル(同社が買収したサンディスクが四日市工場を東芝と共同運営している)が、4月9日付けで東芝の取締役会に対して独占交渉権を求める意見書を送ったと報道されています。その中で、東芝による東芝メモリの売却を契約違反と指摘し、東芝メモリの設立に対しても疑義を示した模様です。東芝は法的に問題ないという立場ですが、もしウェスタン・デジタルが法的手段に訴えるならば、東芝メモリ売却交渉が停滞する可能性もありそうです。なお、ウェスタン・デジタルが1次入札で提示した東芝メモリの買収金額はホンハイのそれを下回った模様です。

4.事態はより混沌としてきた

東芝が今回公表した2017年3月期3Q決算は、監査法人の適正意見(無限定適正か限定付適正)が付いていないことを考えると、仮決算のようなものです。

正式な決算の場合、金融庁(東芝の場合は関東財務局)への四半期報告書提出は期末から45日以内に、本決算の有価証券報告書提出は同じく90日以内に行う必要があります。金融庁はやむを得ない理由があれば延期を認めます。複数回の延期も可能です。ただし、上場企業側が延期申請しなかったり、金融庁が延期を認めなかった場合は、8営業日以内に報告書を提出しなければ上場廃止になります。東芝の2017年3月期本決算が期限内に公表出来るのかどうかが注目されます。

また、今回のように、監査報告書又は四半期レビュー報告書に「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨等が記載された場合は、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると証券取引所が認めるときには、上場廃止となります。今のところ東証は、3月15日に東芝が提出した内部管理体制確認書の審査を通して東芝の上場維持か、廃止かを検討する模様です。この場合、審査に相当の時間がかかると思われるため(おそらく3カ月以上)、すぐに上場廃止になることはなさそうです。

もちろん、四半期報告書と有価証券報告書を期日までに提出すること、2018年3月末までの債務超過の解消の2つの問題も解決する必要があります。

ただし、内部管理体制確認書を審査する上で、監査法人の意見表明がない決算しか公表できない、あるいは2017年3月期本決算の公表が延期された場合は、内部管理体制の不備は明らかとみなされるかもしれません。上場廃止リスクは一段と高くなったと考えざるを得ません。

更に、東芝には事業上のリスク、引いては今の資金繰りを支える銀行の態度に影響を与えかねない問題があります。

一つは、前述した東芝メモリ売却に対するウェスタン・デジタルの抗議です。もし、これによって東芝メモリ売却が遅れたり、予定の売却金額が実現できない場合には、東芝の再建計画には支障が出ます。これについて4月14日に、ウェスタン・デジタルの懸念に対応するため、東芝が半導体事業売却に関連する全ての協議、判断を一時的に停止したと報じられましたが、東芝側は否定しました。

二番目は東芝が持っている特定建設業許可の更新の可否の問題です。各種のプラント事業、インフラ事業を行っている関係で、東芝は4000万円以上の下請け契約を必要とする大規模工事を手掛ける場合に必要な特定建設業の許可を得ています。この資格は、債務超過の場合、債務超過額が資本金の20%を超えないことなどの財務制限があります。東芝の資本金は2016年12月末2000億円なので、400億円の債務超過までなら許容されますが、東芝は2017年3月末には株主資本も純資産も数千億円の債務超過になる見込みです。

次の許可更新時期は2017年12月ですが、東芝メモリの売却が遅れ、債務超過状態が長引いてしまうと、許可が更新できなくなる可能性があります。その場合、年間5000億~1兆円規模の売上高に影響が出る恐れがあります。東芝は、子会社に事業を分社するとしていますが、スムーズにいくかどうかわかりません。

もし、この2つの要因が金融機関の態度に影響すると、大きな問題が起こりかねません。

5.日本政府は何もしないのか

これは私の全くの個人的意見ですが、国が介入するしかないのではないでしょうか。政府系ファンドや金融機関が東芝メモリに出資する、あるいは、東芝本体に資本注入することが検討されてもよい時期だと思われます。1~2兆円規模の大きな資金が動くことになりますが、効果的であると思われます。

こう考える理由は、まず、東芝メモリは他国に売り渡したくない高度な技術が詰まった半導体メーカーだからです。世界市場の中で存在感のある半導体メーカーは、日本では東芝(NAND型フラッシュメモリ)、ルネサス エレクトロニクス(車載用半導体など)、ソニー(イメージセンサ)の3社だけです(表6)。日本企業では、富士通、三菱電機、ローム、デンソーも半導体事業を手掛けていますが、世界市場の中では小規模です。またフラッシュメモリは、一部でSSDとして軍事利用されているため、売り先も限られます。世界経済の中での半導体の重要性を考えると、東芝メモリを外国資本に渡してしまうのはあまりにも惜しいと思います。

ちなみに、WHのチャプター11申請で海外原発事業の損失は確定されると思われます。また、2017年3月期1-3Q累計決算のセグメント別損益を見ると(表2)、悪いのは原発事業のエネルギーシステムソリューションだけで、他の部門は損益が大きく改善しています。決算説明会では、なぜ東芝メモリを残して他部門を売却しないのかという疑問が出ましたが、もっともな疑問です。

もう一つの理由は、もし本当に東芝の経営に今まで以上の問題が生じるとすれば、福島第一原発の廃炉作業に支障が出る可能性があるかもしれないと考えるからです。福島第一原発は沸騰水型原子炉(BWR)ですから、BWRを手掛ける東芝と日立製作所が廃炉作業に必要です(BWRとPWR(加圧水型、三菱重工業が手掛ける)は内部構造が全く異なる)。

もちろん、これだけいい加減な経営をしてきた東芝を国費で救済することに道義は立たないと思います。しかし、道義を超えた国益を考えるべき時が来たのではないかと思うのです。

いずれにせよ、東芝の動きにはこれまでよりも注意が必要になってきたと思われます。

表6 2016年1-6月期の世界半導体売上高ランキング

任天堂

1.楽天証券はアナリストレポートを発行。株価レーティング「A」、目標株価レンジ35,000~37,000円を維持。

楽天証券では、2017年4月14日付けでアナリストレポート「任天堂」を発行しました。詳細はレポートをご覧いただきたいのですが、株価レーティング「A」、目標株価レンジ35,000~37,000円を維持します。業績見通し(表6)は、3月10日付け楽天証券投資WEEKLY「ゲームセクターコメント:任天堂、ソニー」に記載したもの同じです。

表7 任天堂の業績予想(2017年4月)

2.ニンテンドースイッチ用「ARMS」は6月16日、「スプラトゥーン2」は7月21日に発売日が決まった

任天堂の新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」のユーザーからの評価は上々です。任天堂製ソフトは、3月3日発売の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」、4月28日発売予定の「マリオカート8 デラックス」から、今年冬の「スーパーマリオ オデッセイ」まで有力ソフトが順次発売されます。

またこのほど、「ARMS」の発売日が6月16日に、「スプラトゥーン2」が7月21日に決まりました。価格はいずれも5980円です。任天堂製だけでもクリスマス商戦までに十分なタイトル数が揃うと思われます。更に、サードパーティのソフトもかなりの数が揃う予定です。後は、スイッチ・ハードウェアの生産増加に注目したいと思います。

引き続き投資妙味を感じます。

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