バリューとグロースの分類はイマイチ

 アクティブ運用の典型的な投資哲学としては、「バリュー投資」(割安株投資)と「グロース投資」(成長株投資)が有名であり、これらの概念は、運用「スタイル」という言葉で呼ばれることがあるし、それぞれに合わせたベンチマークも考案されている。

 バリュー投資の投資哲学を、大まかにいうと、「(企業価値から決まる)株式の真の価値よりも株価が安い企業の株に投資すると、株価が真の価値に近づくはずであり、その過程で他の投資家よりも大きなリターンを得ることが出来る」という考え方だ。

 他方、グロース投資は、「今後の利益成長率が高い企業の株に投資すると、利益成長と共に高いリターンが実現するはずであり、その過程で他の投資家よりも大きなリターンを得ることが出来る」と考える。

 ゲームプランには、「本当にそれは実現可能なのか」という第一の問いと、「本当にそれができるなら、誰でもそれを模倣しようとするので、有効でなくなるのではないか」という第二の問いが待ち受けている。

 特に、投資の世界にあっては、投資哲学が具体的ゲームプランに結実し、且つそれが所期の結果を収めるためには、ある種の「飛躍」が存在するのが普通だ。バリュー投資にあっては、「株式の真の価値よりも株価が安い企業の株」を自分が正しく判断できると前提することであり、グロース投資にあっては、「今後の利益成長率が高い企業の株」を自分が判断できると考えることだ。

 通常、これらの飛躍は、大半が「運」に任されることになり、結果が良ければ投資哲学の正しさが証明されたことになり、結果が悪い場合も「私の実行方法が(たまたま)悪かった」とか「短期では上手く行かなかったが、長期的には有効なはずだ」といった言い訳に守られて投資哲学自体が批判されることは、ないのが普通だ。

 さて、筆者は、バリューとグロースという分類が、あまり有効だとは思っていない。それは、現在の株式の価値を正しく見極めることと、将来の成長率を正しく予測することの間には、本来的な対立がないからだ。

 株価は、理論的にはネット・キャッシュフローの割引現在価値であり、株式の現在の真の価値を知るためには、将来の利益を正しく予想することが必要だ。

 また、個々の銘柄を見るなら、バリューの哲学から見ても、グロースの哲学から見ても、同時に投資対象になる銘柄もあるし、どちら側から見ても投資対象にならない銘柄もある。

 世間的には、通称「GARP」(Growth At Reasonable Price)と呼ばれる、両者の折衷的な投資哲学もあるくらいで、バリュー投資とグロース投資の概念的な境目は案外曖昧だ。

 一方、運用スタイルの分類としては、PBR(株価純資産倍率)の高低で二分した銘柄群の一方にバリュー・インデックス(PBRの低い方)、他方にグロース・インデックス(PBRの高い方)といったベンチマークを使うこともあり、実務と投資哲学とは、必ずしも一貫性をもって一致しているわけではない。