雇用回復の回復ペースがポイント

 今回の雇用統計ではNFP(米国非農業部門雇用者数)が94万人と急速に回復してきていますが、それでも就業者数はコロナ禍前の水準を、約570万人下回っています。2008年のリーマンショックの時には約870万人の雇用が喪失し、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和から政策変更に動き出したのは、雇用喪失が250万人にまで回復してきた時点でテーパリングに言及したといわれています。そして雇用喪失が100万人にまで回復してきた時点でテーパリングを開始したと言われています。

 それに当てはめると、今回、テーパリングに言及するには今後約300万人が回復した時点(雇用喪失270万人)、テーパリング開始は約470万人が回復した時点(雇用喪失100万人)となります。この先、もし、月100万人ペースで回復すれば、3カ月後にテーパリング言及、5カ月後にテーパリング開始ということになります。このスケジュール感は先程述べたメインシナリオ(来年1月開始)と合致することになります。

 つまり、今後の雇用回復が月100万人ペースで回復するかどうかがポイントになりそうです。6月、7月と2カ月連続で90万人を超える雇用回復となってきたことから、この先も100万人近くを維持する可能性は十分予想されます。9月に入って追加給付が終了し、学校が再開されると雇用回復が加速する可能性もあります。一方で「デルタ株」が蔓延し、感染懸念から接客が必要なサービス業を中心に職場復帰が消極的になって回復ペースが鈍る可能性もあります。

 8月9日に米労働省から発表された6月の雇用動向調査によると、求人数は1,000万人を超えていますが、失業者数は948万人と求人数が失業者数を上回る状態がまだ続いている状況となっています。手厚い失業給付や「デルタ株」懸念で職場復帰に消極的な様子が窺えますが、この状況が9月に入って改善されるかどうかに注目です。