「高すぎる相関係数」といかに付き合うか

 次に、それぞれの指数間の相関関係を見てみよう。

 先ず、「全世界株(日本除)」、「先進国株」、「S&P500」は、何れの2つを取っても相関係数が0.97以上であり、非常に相関関係が強い。「TOPIX」と「日経平均」の相関が0.95なのだから、前3者どうしの相関関係がいかに高いかが分かる(日経平均が些か特異であることもついでに分かる)。

 個人投資家レベルで比較すると、外国株式として「全世界株(日本除)」と「先進国株」の何れを選ぶかについては、殆ど差がないと言えよう。

 例えば、確定拠出年金などで、最も投資したいインデックスに連動する商品がラインナップになくても、手数料が十分安いのであれば、「先進国株」、「全世界株」何れでも殆ど差はないと考えていいということだ。

 さて、国内株式と外国株式3種のインデックスは相関係数が0.78〜0.79と非常に高い。これは、内外の株式に分散投資することの効果が減少していることを意味しており、年金基金などの機関投資家にとって、近年の大きな悩みの種だ。

 この相関の高まりには幾つかの理由が考えられる。先ず、世界の機関投資家がグローバルな株式投資を行うようになり、日本株はそのごく一部をなす「部品」のように扱われていることだ。加えて、日本の経済自体も世界の景気に連動するようになった。株価形成の面でも、経済成長・景気の面でも日本の独自性が低下した。日本の株式市場は、新興国の市場のような一「ローカル・マーケット」の色彩を増している。加えて、先進各国の金融政策が似たものになってきた影響もあり、「日本円」の為替レートの動きがかつてほど大きくないことの影響もある。

 相関係数「0.8」という水準のイメージを説明しよう。例えば、共にリスク(標準偏差)が20%の資産A、Bがあるとして、それぞれを50%ずつ持つとしよう。両者の相関係数が0.8の場合の2資産のポートフォリオのリスクは19.0%(小数第2位四捨五入)である。分散投資の効果が「ない!」とは言わないが、「ごく小さい!」と言わざるを得ないことを感じて頂けるだろう。

 こうした数値を見ると、これまで通り「国内株式」と「外国株式」を何らかの比率で組み合わせる分散投資を個人投資家に勧めるのがいいのかどうかが悩ましい。

 例えば、「全世界株式」一本でもいいのではないか、という仮説が頭に浮かぶ。一方、「国内株式」と「外国株式」で最適なポートフォリオの比率を計算すると、前提の数字の変化や選び方によって、様々な比率が出てくるが、どれがいいのかは判然としない。

 別の観点として、「全世界株式一本」にすると、リスク資産の中で、いわゆる「リバランス」を考えなくていいことは、個人投資家にとってかなり大きな現実的長所だ。「リスク資産は、全世界株式のインデックス・ファンド一本でいい」と言い切ってもいい時代になったのかも知れない。尚、今回、適当なETFがなかったのでデータを提示していないが、数%とはいえ日本株を「含む」全世界株式のインデックス・ファンドが、1本だけ投資するなら好ましく思える。

 尚、相関係数の表を見ると、相対的には「新興国株式」が他の国内株式や外国株式の指数との相関関係が比較的小さいことに気づく。

「国内株式+先進国株式+新興国株式」が、実は面白いかも知れない(比率の考え方は複数ありそうだ)。新興国について調べてみることが億劫でない熱心な読者は、是非、研究してみて欲しい。個人的には、「国内株、先進国株、新興国株」の3資産でリスク資産を持つのもなかなか魅力的に思える。