会社を辞めるとき、迷わなかった?

40代でリタイアしていいものだろうかという思いがあった

 私にとって、やりがいを感じられない仕事は大きなストレスでしたから、退職の決断は早かったですね。しかし、実際に退職するまで1年ちょっとありました。これは、退職に迷っていた時間ではありません。退職を慰留されたり、残務整理や引き継ぎの調整に時間がかかったためでした。

 そして、退職を決断した大きな要素には、家族の理解があります。私が「会社を辞めたい」と話したら、妻は「好きなようにしたらいい」と言ってくれました。普段から資産の状況を伝えていたので、経済的に不安を感じることはなかったのでしょう。

 子どもの教育資金についても、専用の定期預金を置いていたので、授業料など必要な出費以外では手をつけないというルールを守っていれば大丈夫だろうという見通しも立てました。

 とはいえ、何の迷いもなかったというわけではありません。私の世代には「人は誰しも働かなければならない」「仕事をして社会の役に立たなければならない」といった考えを持つ人が多いと思うのですが、私にもそういう思いがありました。つまり、いくらお金に困らないとはいえ、40歳ちょっとでリタイアしていいのだろうかという思いがありました。

 でも、その迷いはあるとき、払拭されました。アーニー・J・ゼリンスキーという人が書いた『働かないって、ワクワクしない?』(ヴォイス刊)という本を読んでいたら、「誰でも、人生の使命を見つけることができる。個人の使命は仕事を通じて果たすこともできるが、いつも仕事に関するとは限らない」という一文があったんです。それを読んで、仕事をしないことを後ろめたく思う必要はないんだ、仕事とは別のことで社会に貢献すればいいのだと教えられました。

FIRE後の生活は?

妻に代わって家事を担当。念願の「株主総会ツアー」も決行

 会社を辞めて2年近く経ちますが、その間仕事はほとんどしていません。今も日本株投資の醍醐味(だいごみ)を多くの人に伝えたいという思いがあるので、ブログはほぼ毎日、更新しています。その他には投資メディアに記事を書いたり、たまに講演などに呼ばれるくらいです。ブログを書くことも含めれば、1日の平均労働時間は1~2時間といったところでしょうか。

 投資に充てる時間も長くはありません。実は会社を辞めて間もない頃、スイングトレードとか短期取引を始めてみたんです。1日中相場に張りつくことができるのだから、一度は、試してみようと。けっこう長い時間、パソコンの前にいました。

 でも、結局、短期取引はすぐにやめました。稼げるか稼げないかの問題ではなく、トレードが楽しくなかったんです。せっかく会社を辞めたんだし、楽しくないことを無理に続けることはないですよね。

 長期投資の場合は頻繁に売り買いするわけではないので、毎日何かをしなければならないということはありません。もちろん、投資は好きなので、投資関連の本を読んだり、ツイッターで情報を集めたりはしますが、ずっとパソコンの前に座って値動きを見守るといったことはほとんどないですね。

 では、毎日何をしているかというと、まずは掃除や洗濯など家事全般をやっています。妻の方は税理士事務所に勤めており、今は週4日のペースでフルタイムで働いています。でも、私が無職になるので、心配して働き始めたというわけではありません。

 妻が仕事に行く日は、食事の準備もします。結婚してからは料理なんてほとんど作ったことがなかったので、どうなることかと思いましたが、やってみたら案外楽しくて、レパートリーもずいぶん増えました。得意料理と言える程のものはないですけど(笑)。

 そうそう、会社を辞めてからは、よく自分が保有している会社の株主総会に行くようになりました。普通はどこも平日に開催するので、会社員時代は行きたくても行けなかったんです。これはアーリーリタイアしたら一番やりたかったことなんですよ。

 北海道の札幌に本社があるニトリホールディングス(9843)や、本社は東京でも工場のある九州で株主総会を開いたアリアケジャパン(2815)など、地方で開催された総会にも足を運びました。

 私は一人旅も好きなので、株主総会の日程に合わせて、旅行の計画を立てるのです。

 ニトリのときもアリアケのときも、2泊3日だったのですが、あちこち観光地も回って、最高に楽しかったですね。今はコロナ禍で旅行は行きにくいので少し控え気味ですが、いずれ新型コロナウイルスの感染拡大が収束したら、また「株主総会ツアー」をより積極的に行いたいです。

どう変わった?FIREのBEFORE→AFTER

  FIRE前 FIRE後
起床時間 6時 6時半。家族に合わせて起きる
通勤時間 30~40分 0分
労働時間 10~11時間 0~2時間程度。ブログの更新、原稿執筆など
毎月の生活費 会社の同僚や部下と飲みに行く機会が多かったため、飲食費に相当額を使っていた。
それ以外は一般の家庭と変わりない
外での飲食代がほとんどなくなった
毎月の収入 給与・ボーナス 定期的なまとまった収入はない
収入源 会社の給与・ボーナス、株式の配当     ブログのアフィリエイト収入、原稿執筆料、講演料、株式の配当
肉体的疲労度 労働時間が長かったため、肉体的疲労度は大 会社員時代に感じていたような疲労はない
精神的疲労度 退職直前は望んだ仕事ではなかったので、ストレスが大きかった 株価をチェックしなければ、ほぼゼロ。人間関係のストレスはなくなった
毎日の充実度 日によって20~80%と振れ幅が大きい。平均50%     平均55%で安定