トヨタ自動車の燃料電池車、新型「MIRAI」に期待

 トヨタはガソリン車で世界トップの競争力をもっていますが、それだけでは株式市場で高い評価を得られなくなっています。世界各国が脱炭素を進める中、将来、電気で動く自動車【注】がガソリン車を代替する時代が来ると思われているからです。

【注】電気で動く自動車はなぜ環境車か?
現在、人類が使用する電気はほとんど化石燃料を燃やして作っています。したがって、現時点で電気自動車は環境車とは言えません。ただし、将来、太陽光・風力・地熱など再生可能エネルギーですべての発電をまかなえるようになれば、電動車は完全な環境車となります。将来、電源が100%再生可能エネルギーになる時代を見据えて、今から自動車を電動に転換することが、持続可能な環境対策として必要と考えられています。

 未来のエコカーとして、今、最も有望と考えられているのが、EV(電気自動車)です。水素を使って発電しながら走る燃料電池車も、その候補に入っていますが、現時点ではEVほど有望視されていません。まだ製造コストが高すぎることや、水素流通インフラが整っていないことが理由です。

 そのため、2020年は、世界の株式市場でEV(電気自動車)関連株が軒並み大幅に上昇しました。その中心はEV生産で最先端を走る米テスラです。EVが次世代エコカーの本命と見なされるようになったからです。世界中の年金・投資信託などで、ESGを重視して投資するマネーが急速に膨らみ、EV関連株に投資資金が集中しました。

 ただし、EVが、次世代エコカーとして最初から本命視されていたわけではありません。初期のEVには問題が多く、2014年くらいまでは、ガソリン車の代替は無理と思われていました。ガソリン車と比較して、EVには4つの問題があります。

次世代エコカーの性能比較・ガソリン車と比較

出所:〇△×の評価は筆者判断

 第1の問題は、充電に時間がかかることです。急速充電を使っても、フル充電まで20~30分かかるのが普通です。第2の問題は、1回の充電で走行できる距離(航続距離)が、初期のEVでは100キロメートルくらいしかなかったことです。満タンで500キロ以上走るガソリン車より大幅に短かったので、使い物にならないと思われた時期もありました。

 ただし、近年、車載電池の性能が大幅に向上したおかげで、今は200~300キロ走る車種もたくさん作られるようになりました。ガソリン車並みの航続距離500キロを超えるEVも開発されています。ただし、航続距離の長いEVは、まだ価格が高すぎます。実際には航続距離100キロもあれば日常用途には支障ないので、価格が高すぎない普及型で、毎日自宅で夜間に充電して使う方式が定着しつつあります。

 EVの第3の問題は、インフラ(充電ステーション)整備です。ガソリンステーションと比べると、まだ数が足りません。将来、EVに乗る人が増えるにしたがって、自然に増加していくと考えられるので心配はしていません。

 第4の問題は、ガソリン車と比べてまだ価格が高いことです。電池が高額です。ただ、量産が進むにつれて価格は低下してきています。将来はガソリン車並みの価格に下がると考えられます。