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最大のリスク要因は中国当局の規制強化

 まず、東京市場の上値を限定的にしている「懸念材料」を明確にしておきます。コロナ感染拡大、政治、中国、米国、需給など多くの懸念があります。

  • 国内のコロナ感染拡大リスク
    デルタ株まん延による緊急事態宣言の長期化による、小売・外食・サービス・エンタメなどへの悪影響。医療のひっ迫はさらなる活動制限措置につながる。
  • 政治リスク
    菅政権の支持率低迷を嫌気し、外国人投資家がさらに日本株の売買を手控える可能性。秋の総選挙前後に政治が混乱するリスク。
  • 中国政策リスク
    中国当局がIT(情報通信分野)をはじめとする業界への規制(独占禁止法など)を強化し、介入度合いを強めていることによる警戒感の高まり。
  • 米国政策リスク
    米バイデン政権が大型インフラ投資政策の実現に向け、法人税を増税する可能性をマーケットが嫌気するリスク。
  • 政策保有株売却による需給リスク
    2015年のコーポレートガバナンス・コード策定以降続いているが、株高による売却加速、さらに東証市場再編に伴う売りも。

 中でも「中国リスク」がもっとも日本株動向に影響を与えているようです。日々、「チャイナ株」の動向も気にされています。

 香港市場、上海市場とも日本時間午前10時半に取引がスタートしますが、プレ・オープニング(香港10:00~10:30、上海A株市場10:15~10:25)の段階で、その動向によって日経平均が伸び悩みや一段高、反転高(安)など急な動きを見せることが多くなっています。

 中国経済は世界景気への影響が大きく、その変化に投資マネーが敏感に反応しています。中国政府が中国の経済発展に終止符を打ちかねないと疑心暗鬼なのです。

 中国当局による主な規制強化をまとめておきます。

2020年
11月3日 アリババ集団(ネット通販大手)の金融子会社アント・グループに対し香港、上海市場への同時上場延期命令

2021年
4月10日 アリババ集団に対し独占禁止法違反で罰金措置
4月26日 美団(出前アプリ大手)を独占禁止法違反の疑いで調査
7月4日  滴滴出行(配車アプリ大手)に対しアプリダウンロード停止命令
7月10日 テンセント(ネット大手)傘下ゲーム配信会社に経営統合差し止め命令
7月24日 テンセントを音楽配信会社M&A(合併・買収)について独占禁止法違反で処分
     小中学生向け学習塾の実質国有化
7月26日 ネット企業に対し、独占禁止法・利用者保護・データ管理・認可などについて半年間取り締まりを強化すると発表

 世界上場企業の時価総額ランキング(2021年6月末)で、テンセントは第7位(7,224億ドル/79兆4,640億円)アリババ集団は第11位(6,151億ドル/67兆6,610円)の企業です。中国当局の規制によって2社の業績の先行きに暗雲がたち込めることは、世界株にも悪影響を与えることになります。

 米アップルやマイクロソフト、アルファベット(グーグル)などの巨大企業が仮に当局の規制を受けた時のことを想像してみてください……。