戻りが鈍い銀行株の反発あるか?

 4月9日(日)から植田和男日本銀行総裁の任期がスタートします。就任会見での焦点はもちろん「金融政策変更の有無」です。そう遠くない時期に細部では変更が加えられるのではないかと予想する個人投資家も多いでしょう。

 27~28日の日銀金融政策決定会合での政策変更予想は、欧米発金融不安の影響もあり後退している印象があります。半面、6月15~16日の会合での政策変更はあり得るという見方はやや強まっている印象です。

 植田氏が所信聴取で、「基調的な物価見通しが一段と改善していく姿になっていけば、正常化方向での見直しを考えざるを得ない」と発言し、将来的な正常化の可能性に言及していることがその根拠として指摘できます。このまま欧米発金融不安が収束していくのであれば、植田証言に沿った動きの端緒が出てくるのではということでしょう。

 日銀は昨年12月20日、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)で0%程度に誘導している10年国債利回りの許容変動幅を上下0.25%から0.5%に拡大すると突然決定しました。株式市場では目立って、メガバンク株を中心とする「銀行株」が買われた経緯があります。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306・プライム)

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三井住友フィナンシャルグループ(8316・プライム)

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

みずほフィナンシャルグループ(8411・プライム)

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 メガバンク3行の株価の、昨年12月20日以降の上昇はあまりにも急でした。大規模緩和修正によっていずれ日本の長期金利が明確に上昇していくことは銀行にメリットとなると思われたことが要因です。

 その後、米シリコンバレー銀行破綻に端を発し、スイス拠点の金融大手クレディ・スイスが同業のUBSグループに買収されるなど「欧米発金融不安」のあおりを受け、信用不安がほとんど無い日本のメガバンクまで売られる格好となりました。

 現状、世界的な金融危機に発展する気配は感じられないものの、日本の銀行株の反発は限定的です。実はこのことは多くの個人投資家が注目していることでしょう。勢いを伴って反発するのではないかという期待は一度裏切られています。

 もしこの先急反発があるとすれば、そのきっかけをつくるのは「日銀」ではないかと思われます。植田日銀総裁の会見での発言については「言いまわし」や「抑揚」も含めて注視することになります。

米中経済デカップリング強まると鉄鋼株に追い風?

 もう一つ注目されるのは「鉄鋼株」でしょう。鉄鋼株も昨年秋以降に強まったバリュー株物色の中心となったセクターです。流動性は極めて高く、長期投資家にも短期投資家にも選好されていた一群でしょう。

 鉄鋼株、とりわけ大手鉄鋼株は中国経済の動向に左右される側面があり、足元の中国マクロ経済の動き、また中国については各段に政府の影響力が強くその動向も注目されます。

 中国国家統計局と物流購買連合会が3月1日に発表した2月の製造業PMI(購買担当者指数)は、前月から2.5ポイント上昇し「52.6」となり、2カ月連続で好不調の境界線となる「50」を上回りました。

 これは2012年4月(53.3)以来の高水準です。中国ではゼロコロナ政策撤廃以降、春節休暇期間(1月21~27日)を経た後もコロナ感染者が目立って増加しておらず、それに伴い企業活動の正常化が加速しているとみられます。

 他方、金融マーケットが欧米発金融不安に揺れる中、3月10日にサウジアラビアとイランが中国の仲介により外交関係の正常化で合意したと報道されました。共同声明では「中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の積極的な提案に応じた」ことが明言されています。

 サウジアラビアの同盟国の米国はどうやら関与していなかったもようです。国際関係での米国の影響力の後退と中国の伸張という観点で語られることになっています。この様子から「デカップリング」という言葉が浮上することになるかもしれません。

 デカップリングとは、特に金融市場では2国間の経済や市場などが連動していないことをいいます。例えば米国の経済が停滞しても、それとは関係なく中国などの経済が成長し、世界経済の拡大が続く場合などに用いられる文言です。

 欧米がウクライナ戦争や金融不安に手を取られている間にさらにデカップリングが進む…。東京株式市場ではその動きを反映するのが鉄鋼株ではないでしょうか。最も先に株価が反応するかもしれず、やはり目を離すことができないでしょう。

鉄鋼大手株5銘柄

コード 銘柄名 株価(円)
5401 日本製鉄 2,978
5411 JFEホールディングス 1,613
5406 神戸製鋼所 997
5471 大同特殊鋼 5,140
5440 共英製鋼 1,576
※株価データは2023年4月5日終値ベース。

日本製鉄(5401・プライム)

 粗鋼生産量で国内首位、世界4位で、高級鋼板で圧倒的な存在の企業です。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

JFEHD(5411・プライム)

 粗鋼生産国内2位、世界10位台のJFEスチールを中核とする持株会社です。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

神戸製鋼所(5406・プライム)

 粗鋼生産国内3位で、アルミ・銅、産機・建機・電力など複合経営に特色があります。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

大同特殊鋼(5471・プライム)

 世界最大級の特殊鋼専業メーカーで、自動車向けが売上高の約6割を占めています。 

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

共英製鋼(5440・プライム)

 西日本地盤の電炉大手メーカーです。ベトナム、北米など海外展開に積極的です。

・6カ月日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)