米NASDAQ総合指数はすでに懸念を織り込んだ!?
日経平均株価(225種)は昨年最後の取引日12月30日(大納会)の終値は2万6,094円50銭でしたが、今年1月下旬に2万7千円台を回復し、その後、2月8日時点では2万7千円台半ばを中心に推移しています。
日本のハイテク株動向に強い影響がある、米ニューヨーク株式市場のNASDAQ(ナスダック)総合指数も年末の約1万0466.48ポイントから1万2,000ポイント近くまで急反発しています。
2021年11月の取引時間中に付けた史上最高値(1万6,057.44)と比べるとまだ低い水準ではあるものの、短期間の上昇スピードは出色です。米国株も昨年の下落局面から、反発に転じていることを認識しなければならないでしょう。
米国ではインフレ抑制のための利上げ、利上げを受けた企業業績低迷からの回復にめどがついてきたとみていいのではないでしょうか。米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は1月31日~2月1日に金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)を開催しました。大方の予想通り政策金利の誘導目標を0.25%引き上げて、4.5~4.75%にしました。
利上げ幅は前回昨年12月会合の0.5%から圧縮された格好です。2月1日のFOMC後に公表された声明文では継続的な利上げが適切としたもののインフレ(物価上昇)が和らいできたとの認識を示しました。利上げが最終局面入りしていることを示唆しています。
FRBのパウエル議長がFOMC後の会見で「あと2回程度の利上げを検討している」と具体的な利上げ回数に言及しています。
それを前にして米NASDAQが強い反発を見せたことは、「株式市場の先見性」が発揮されたものと言えそうです。株式市場に不安や懸念は常に存在しているものの、それらを株式市場が織り込んだことや、乗り越えたことはあまり言われることがありません。株価の動きそのものをよりどころに読み取っていくことになります。
米IT大手企業の2022年10-12月期決算でも「GAFAM(アップル(AAPL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、アルファベット(GOOG)、メタ・プラットフォームズ(META)、マイクロソフト(MSFT)」の決算は、5社全ての純利益が前年同期比で減益となるなど散々なものでした。
しかし、その後、5社の株価が大きく崩れたわけではありません。(アップルを除く)4社で計5万人強の人員削減計画が示され、まだ減益局面は続くとされているものの、株価は今年ここまでおおむね反発しています。日本株にとって後押し材料となると思われます。
・日経平均の6カ月日足チャート
・米NASDAQ総合指数6カ月日足チャート
投資家動向活発化の先に高配当銘柄が
米NASDAQに反応する日本株の筆頭は「半導体関連株」でしょう。投資家の動きを推測する銘柄としても重要視される半導体製造装置大手「東京エレクトロン(8035・プライム)」、「レーザーテック(6920・プライム)」、「SCREENホールディングス(7735・プライム)」、「アドバンテスト(6857・プライム)」、「ディスコ(6146・プライム)」などの株価が挙がります(乱高下のレーザーテック株以外は堅調推移)。ここではさらに考察を深めるべく半導体周辺銘柄の動きも確認しておきます。
NASDAQ回復に反応しやすい日本の半導体関連5銘柄
コード | 銘柄名 | 株価(円) | |||
---|---|---|---|---|---|
4047 | 関東電化工業 | 1,001 | |||
6055 | ジャパンマテリアル | 2,360 | |||
4186 | 東京応化工業 | 6,480 | |||
4203 | 住友ベークライト | 4,420 | |||
6368 | オルガノ | 3,245 | |||
※株価データは2023年2月8日終値ベース。 |
関東電化工業(4047・プライム)
半導体用特殊ガスメーカー。
・1年日足チャート
ジャパンマテリアル(6055・プライム)
半導体工場向け特殊ガス供給装置メーカー。
・1年日足チャート
東京応化工業(4186・プライム)
半導体製造工程で使われる化学薬品フォトレジストで世界首位級企業。
・1年日足チャート
住友ベークライト(4203・プライム)
半導体封止材料の世界首位企業。
・1年日足チャート
オルガノ(6368・プライム)
半導体向け純水製造装置メーカー。
・1年日足チャート
足元の株価の動きは堅調です。東京株式市場の動向に強い影響がある半導体関連株の中で主力銘柄やそれに続く準主力銘柄の動きが強いものであることは、投資家の取引が活発化していることを映すものといえます。ここから東京市場では「物色」がさらに進む可能性もあります。
半導体関連株のほかでは、銀行株は目立って動意があるセクターで、他の金融株(保険、証券、ノンバンク)にも波及している印象があります。鉄鋼株もバリュー株が評価される中で強い動きをしています。
さらに注目すべきは、スケジュール(3月29日が期末配当権利付き最終売買日)を背景に「期末配当取り」の動きが加速することです。この動きが出てきた場合、特に配当利回り4%超の高配当銘柄への注目度が高くなるでしょう。ここでは高い流動性を持つ主力・準主力株から配当落ち後の動きにも不安が小さいと思われる高配当銘柄をピックアップします。
配当落ち後にも根強い高配当5銘柄
コード | 銘柄名 | 株価(円) | |||
---|---|---|---|---|---|
1808 | 長谷工コーポレーション | 1,480 | |||
7202 | いすゞ自動車 | 1,591 | |||
4182 | 三菱ガス化学 | 1,888 | |||
8309 | 三井住友トラスト・ホールディングス | 4,840 | |||
1925 | 大和ハウス工業 | 3,053 | |||
※株価データは2023年2月8日終値ベース。年間予想配当利回り4%超 |
長谷工コーポレーション(1808・プライム)
マンション専業のゼネコン。首都圏・近畿圏の分譲マンション施工で圧倒的シェア。
・1年日足チャート
いすゞ自動車(7202・プライム)
商用トラック・バスメーカー大手。海外での「ピックアップトラック」が柱。
・1年日足チャート
三菱ガス化学(4182・プライム)
基礎化学品や機能化学品を生産。ニッチな高シェア商品を多数持つ。
・1年日足チャート
三井住友トラスト・ホールディングス(8309・プライム)
傘下に三井住友信託銀行を擁する。信託財産残高で国内首位。
・1年日足チャート
大和ハウス工業(1925・プライム)
ハウスメーカーの雄、住宅建築で断トツの存在感。傘下にゼネコンのフジタなども。