★筆者が選ぶ銘柄一覧は3ページに掲載しています。
最大のリスク要因は中国当局の規制強化
まず、東京市場の上値を限定的にしている「懸念材料」を明確にしておきます。コロナ感染拡大、政治、中国、米国、需給など多くの懸念があります。
- 国内のコロナ感染拡大リスク
デルタ株まん延による緊急事態宣言の長期化による、小売・外食・サービス・エンタメなどへの悪影響。医療のひっ迫はさらなる活動制限措置につながる。 - 政治リスク
菅政権の支持率低迷を嫌気し、外国人投資家がさらに日本株の売買を手控える可能性。秋の総選挙前後に政治が混乱するリスク。 - 中国政策リスク
中国当局がIT(情報通信分野)をはじめとする業界への規制(独占禁止法など)を強化し、介入度合いを強めていることによる警戒感の高まり。 - 米国政策リスク
米バイデン政権が大型インフラ投資政策の実現に向け、法人税を増税する可能性をマーケットが嫌気するリスク。 - 政策保有株売却による需給リスク
2015年のコーポレートガバナンス・コード策定以降続いているが、株高による売却加速、さらに東証市場再編に伴う売りも。
中でも「中国リスク」がもっとも日本株動向に影響を与えているようです。日々、「チャイナ株」の動向も気にされています。
香港市場、上海市場とも日本時間午前10時半に取引がスタートしますが、プレ・オープニング(香港10:00~10:30、上海A株市場10:15~10:25)の段階で、その動向によって日経平均が伸び悩みや一段高、反転高(安)など急な動きを見せることが多くなっています。
中国経済は世界景気への影響が大きく、その変化に投資マネーが敏感に反応しています。中国政府が中国の経済発展に終止符を打ちかねないと疑心暗鬼なのです。
中国当局による主な規制強化をまとめておきます。
2020年
11月3日 アリババ集団(ネット通販大手)の金融子会社アント・グループに対し香港、上海市場への同時上場延期命令
2021年
4月10日 アリババ集団に対し独占禁止法違反で罰金措置
4月26日 美団(出前アプリ大手)を独占禁止法違反の疑いで調査
7月4日 滴滴出行(配車アプリ大手)に対しアプリダウンロード停止命令
7月10日 テンセント(ネット大手)傘下ゲーム配信会社に経営統合差し止め命令
7月24日 テンセントを音楽配信会社M&A(合併・買収)について独占禁止法違反で処分
小中学生向け学習塾の実質国有化
7月26日 ネット企業に対し、独占禁止法・利用者保護・データ管理・認可などについて半年間取り締まりを強化すると発表
世界上場企業の時価総額ランキング(2021年6月末)で、テンセントは第7位(7,224億ドル/79兆4,640億円)アリババ集団は第11位(6,151億ドル/67兆6,610円)の企業です。中国当局の規制によって2社の業績の先行きに暗雲がたち込めることは、世界株にも悪影響を与えることになります。
米アップルやマイクロソフト、アルファベット(グーグル)などの巨大企業が仮に当局の規制を受けた時のことを想像してみてください……。
ネガティブインパクトは次第に織り込まれる公算
中国政府はなぜこのような規制を行っているのでしょうか? 中国政府の基本方針にその答えがあるように思います。
2020年12月の「中央経済工作会議」で、2021年の重点課題の1つとして「企業による独占禁止と資本の無秩序な拡大の防止」が挙げられています。さらに2021年3月の「全国人民代表大会(全人代)」の5カ年計画で「全人民が共に豊かになることを着実に推進する」との目標が採択されています。
相次ぐ規制強化は政府の基本方針に沿ったものであることが分かります。
中国当局の情報開示は常に限定的であることから、投資家に不穏な印象を与えることが多いですが、足元の規制は、前の時代に逆戻りするようなことではなく、民間企業に対する締め付けも長期間続くものではないでしょう。
景気が下振れする場面では、中国人民銀行(中央銀行)が金融政策面で本土株式市場を下支えする可能性もあります。
株式市場がネガティブ事象を織り込む際には、「事象自体が収束する(少なくとも頻発しない)こと」「株価が下落すること」「一定の時間が経過すること」の3つのケースがあります。そして、急落した銘柄が出直ることによってさらに気にされなくなっていくのです。
そうした時、東京市場では「アリババ集団」「テンセント」など中国IT大手企業と親密な関係にあり、足元株価が下落した銘柄が反発すると考えています。
反発に期待、アリババ、テンセント関連株
コード | 銘柄名 | 株価(円) | |||
---|---|---|---|---|---|
9984 | ソフトバンクグループ | 6,837 | |||
2489 | アドウェイズ | 653 | |||
3623 | ビリングシステム | 999 | |||
3680 | ホットリンク | 588 | |||
6081 | アライドアーキテクツ | 813 | |||
※株価データは2021年8月4日終値ベース。 |
ソフトバンクグループ(9984・東証1部)
最大出資先は「アリババ集団」で、約25%保有しています。
・1年日足チャート
アドウェイズ(2489・東証1部)
アフィリエイト広告の国内大手企業です。アリババ集団の越境ECサイト「天猫国際(Tmall Global)」の出店・運営で業務サポートをしています。
・1年日足チャート
ビリングシステム(3623・マザーズ)
インターネット決済サービス代行企業です。テンセントが運営する「We Chat Pay」決済も手掛けています。
・1年日足チャート
ホットリンク(3680・マザーズ)
データ解析によるSNSマーケティング支援が主力です。テンセントの「We Chat Pay」の日本でのプロモーション支援を行っています。
・1年日足チャート
アライドアーキテクツ(6081・マザーズ)
SNSに特化した企業マーケティング支援主力で、テンセントの公式パートナーです。プラットフォーム「Tencent Tui」を通じた広告運用サービスの提供を行っています。
・1年日足チャート
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