Are You Lonesome Tonight?

 6月の米雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)は、今年最大となる85.0万人の増加となりました。(5月58.3万人、4月27.8万人)。米国の労働市場はコロナ禍からしっかりと立ち直りつつあるようです。ところが、めでたしめでたしとはいかないのです。

 これまでは仕事がなかった。ところが、全米の企業が一斉にスイッチをオンにして、従業員を増やそうとするなかで、今度は十分な働き手を確保できなくなっている。米国の労働人口が減ってしまったというのでしょうか?

 米国では2020年1月に比べて就業者数が約900万人減少しました。しかし今年4月のデータによると、ほぼ同数の求人募集がりました。失業者がいて仕事もある。それなのに雇用が伸びないのは、米国の労働人口の減少が原因ではなく、短期的な雇用のミスマッチの問題と考えられます。

 米国の雇用市場は極端な売り手市場になっていて、できるだけ自分を高く売ろうとしたり、より良い仕事を求めて転職を繰り返したりしている人が増えている。米国で4月に仕事を辞めた労働者の割合は、過去20年で最大の水準。失業給付金がたっぷりもらえるから、すぐに働かずにゆっくりと自分に合う仕事を探すこともできる。雇用のミスマッチを原因とした雇用者数低迷はもう少し続くことになる。

 しかし、仕事から離れる期間が長くなればなるほど、いったん流れが変わった時には堰を切ったように人々が雇用市場になだれ込み、雇用統計の雇用者が100万人どころか、月200万人に急増する上向きリスクも高まっているのです。

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、7月FOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で「雇用市場(の回復)は、まだまだ十分とはいえない」との見解を示しました。だから「緩和縮小を急ぐ必要がない」とつながっていくわけですが、もし雇用者が100万人を超えるならば、この理由は通用しなくなる。

 マーケットの期待は急に盛り上がり、緩和縮小は9月では遅い、8月ジャクソンホールで発表だ、ということになります。

 パウエルFRB議長がいくら否定したところで、マーケットは利上げ前倒しを織り込み、米長期金利の急上昇を引き起こす可能性があります。