課題はまだ山積みだが、投資教育の取り組みが日本を変えていく

 とはいえ、過去にない取り組みだけに問題はまだまだ山積みです。

 企業型確定拠出年金の現場では、「継続教育」つまり反復的な教育機会の提供が重要になっています。制度スタート時(あるいは入社時)の、たった一度の教育だけでは投資理解度は十分ではないからです。

 無関心層が教育を受けても無関心層のままでいることは、その社員の資産運用が何年も放置されてしまうことを意味します。よく分からないままに「定期預金100%」としている人を変えるのは、繰り返しの投資教育しかありません。

 そこで、社員の理解度の差に応じた複数コンテンツの提供、世代別コンテンツの提供、eラーニングの効果的活用など、理解度を高める取り組みが現場では続けられています。

 iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の普及も、投資教育の課題の一つです。確定拠出年金法では、iDeCoも企業型の制度も同じくくりにありますが、投資教育の取り組みは企業型ほどではありません。

 というのは、個人が自分の意思で任意に口座開設するわけですから、ある意味、強制的に加入させられる企業型確定拠出年金と構図が異なるからです。すでに理解度の高い人も多く、改めて基礎的な投資教育は不要であるかもしれません。

 こちらはむしろ、iDeCoの裾野を広げていくために、「未加入者への投資教育」が必要かもしれません。しかし誰がその役割を担うかは難しい問題です。

 確定拠出年金から始まった「投資教育」の流れは、これからも継続していくことでしょう。少なくともいえることは「長期・積立・分散投資」というキーワードすら、20年前には誰もピンとこないものでした。

 国民の金融リテラシーをじわじわと底上げする担い手として、確定拠出年金の投資教育はこれからも役割を果たしていくことでしょう。

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