自己投資の金額はちょっとしたマンションくらい?

奥野さん 
若いときは本業の仕事に専念しながらしっかりと自己投資して、自分が働いて得られるお金をどう増やすか。まずはこれを先に考えよう。将来のための自己投資というのは、一番安全で、利回りが高い投資なんだよ。

ただ、自己投資だけだと「人生100年時代」はお金が足りなくなる。そこで、ようやく資産運用、投資の出番が来るんだ。

投資を通じて社長さんに働いてもらうことが、資産のうちの「2番目のおサイフ」になると考えてみて。シノちゃんの場合、ジュニアNISAが、この「2番目のおサイフ」になるね。

シノちゃん 
私、まだ幼稚園生だけど、ジュニアNISAでお金を貯めて増やすことができたら、大学や海外留学の学費として使ってもいいんだよね。奥野さんが出張で行くアメリカにも行ってみたい! なんか楽しみになってきた! 
ところで、奥野さんは自己投資って何をしてきたの?

奥野さん 僕はね…実はたくさん自己投資をしてきたんだよ。

大学卒業後の銀行員時代、海外留学に行きたかったから、まず英会話スクールに通ったんだ。当時はまだ若くて貯金も十分になかったから、銀行からお金を借りて行ったんだけど、なかなか流ちょうに話せるまでにはならなかった(苦笑)。他にも、中小企業診断士や米国公認会計士などの資格にもチャレンジしてみたけど、結局資格を取得するには至らなかった。

 こんなふうに、一つ一つ振り返ると無駄なように見えるけど、最終的に自費で海外留学して、同等のスキルや知識を身につけることができたし、修士号も取得できた。何より、若いころに勉強したことは確実に身になっているし、今の仕事に役に立っていると自信を持って言えるよ。ちょっとしたマンションが買えるぐらい(?)のお金を使ってきたけどね(笑)。

シノちゃん ひぇー! しかもお金を借りたんでしょ!? それは確かに大変な投資だわ!

奥野さん でもね、こうして若い頃の散財があったからこそ気付けたことがたくさんあるんだよ。だから、自分のためにお金を使うことは悪いことではないと自信を持って言える。

 今、若い人たちの間でFIRE(Financial Independence, Retire Early=経済的自立、早期リタイア)のための資産運用術などもはやっているみたいだけど、少なくとも僕は、人間の幸福は経済的なものだけではないと思っている。

 経済的に自立することを否定するわけではないけど、やっぱり人との関わりも自分の幸福につながっているから、ひたすらお金を貯めて、増やして、それを取り崩していくって、なんかちょっと味気ないなって思ってしまうよ。