ホントに知ってる? 社会やケイザイのこと? なんとなく知っているはずなのに、質問されると、大人でもうまく説明できないケイザイのコト、幼稚園児でも世の中を知っているシノちゃんが教えます。
インデックスファンドだけでは、もったいない?
最近、お母さんが開設してくれたジュニアNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で、インデックスファンドを買ってみたシノちゃん。
日々タブレットで経済ニュースもチェックして、投資家としての心構えは完璧だと思っていたのに、農林中金バリューインベストメンツCIO(最高投資責任者)の奥野一成さんからお話を聞くうちに、シノちゃん(5さい)が知らない、投資の奥深さに気が付きました。
≫前編「投資のことをイチから教えて!」はこちら
≫中編「正しい投資ってあるの?」
≫後編「バフェット流の投資心得って?」はこちら
シノちゃん
株式投資をする人や、奥野さんのように、お客さんから預かった大きなお金を運用するお仕事の人には、「価値のある会社」って大切なことだと思うけれど、私みたいに投資信託のインデックスファンドを買っている場合はどうなの?
費用も安いし、分かりやすいし、積み立てをするには相性がいい最強の金融商品だって聞いたんだけど。
奥野さん
さすがシノちゃん! いい質問だね。確かに、シノちゃんみたいに、NISA口座で投資信託を保有するときの選択肢として、インデックスファンドは決して間違ってはいないよ。
シノちゃん よかったー。
奥野さん でも個人的には、インデックスファンドだけを保有するのはもったいないと思うな。
シノちゃん え? もったいない? インデックスファンドでも十分、投資成果が出ているのよ!
奥野さん インデックスは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、市場全体の動きを表す指数だっていうのは知っているよね。
インデックスファンドは、その市場全体にまるっと投資ができるという「オトクさ」はあるけれど、それ止まり。
あくまでも、インデックスを算出する一つの会社が作ったルールに沿って選ばれた会社が、インデックスに組み入れられているに過ぎないからね。前編で僕が説明したような「価値が高い」会社がインデックスに組み入れられているとは限らないんだよ。
シノちゃん え? 価値が高い会社なのに? そっか…。価値が高い、いい会社に投資をしたいと思ったら、インデックスファンドじゃないほうがいいのね。
でも、投資のコスパを考えたら、やっぱりインデックスの方が効率いいんじゃない?
奥野さん シノちゃん、いろいろよく知っているね! 効率性だけなら、確かにそういう考えになるかもしれない。でも、投資って効率がいいから、いい投資っていうわけじゃないんだ。
それと、自分が投じたお金がどのように生かされるか、シノちゃんは興味ない?
シノちゃん そうね…。
奥野さん 前編でも少しお話ししたけれど、そもそも投資というのは、株を売ったり買ったりすることではないんだ。会社に投資をするということはつまり、その会社の社長さんに働いてもらうことと同じなんだよ。
会社に投資することは、社長さんに働いてもらうこと?
シノちゃん
え? 社長さんに働いてもらう!?
奥野さん
そう。シノちゃん、知っているかな? 日本電産なら以前の社長の永守重信さん、フェイスブックならマーク・ザッカーバーグ、みたいなイメージだね。
シノちゃん 知ってる、知ってる!
奥野さん 会社の経営者は、株式を買うことで資金を投じてくれた株主のために経営戦略を練り、継続的に利益を稼ぐために努力をする。そして株主は、結果として会社が稼いだ利益の一部を、株式の持ち分に応じて得ることができる…というのが投資の仕組みだよ。
だから、経営者である社長さんの働き、力量次第ってことになるんだ。
シノちゃん そっか。社長さんにがんばってもらわないとね。
奥野さん そして、株主は利益をだまって待つだけじゃなくて、経営者がきちんと仕事をしているかチェックする必要がある。だから、前編で話したように、情報をきちんと見極めて、投資に値するか、自分で考えることが重要なんだ。
シノちゃん うん。「会社の価値を見極める」だよね!
奥野さん あともう一つ、違う視点で「投資」について、お話ししようね。
シノちゃんはまだ5歳でとっても若いから、あまり経験がないかもしれないけど、自分のためにお金を使うことも立派な「投資」なんだよ。
シノちゃん お金を使うのに投資? お金は使ったらなくなっちゃうでしょ!
奥野さん シノちゃん、自己投資って分かるかな?
自己投資の一番分かりやすい例は、勉強、つまり教育のためにお金を使うこと。本を買ったり、学校や塾へ行ったりするにはお金がかかる。でも、お金を払って身につけた知識は、やがて社会に出たときに、仕事や金銭的な報酬として返ってくる。
もちろん、教育だけではないよ。芸術に触れたり、旅行に行ったりして見聞を広めることも投資の一種だね。
シノちゃん そっか。いろんな投資の共通点は、お金を投じて必ず自分に返ってくるってことなのね。
自己投資の金額はちょっとしたマンションくらい?
奥野さん
若いときは本業の仕事に専念しながらしっかりと自己投資して、自分が働いて得られるお金をどう増やすか。まずはこれを先に考えよう。将来のための自己投資というのは、一番安全で、利回りが高い投資なんだよ。
ただ、自己投資だけだと「人生100年時代」はお金が足りなくなる。そこで、ようやく資産運用、投資の出番が来るんだ。
投資を通じて社長さんに働いてもらうことが、資産のうちの「2番目のおサイフ」になると考えてみて。シノちゃんの場合、ジュニアNISAが、この「2番目のおサイフ」になるね。
シノちゃん
私、まだ幼稚園生だけど、ジュニアNISAでお金を貯めて増やすことができたら、大学や海外留学の学費として使ってもいいんだよね。奥野さんが出張で行くアメリカにも行ってみたい! なんか楽しみになってきた!
ところで、奥野さんは自己投資って何をしてきたの?
奥野さん 僕はね…実はたくさん自己投資をしてきたんだよ。
大学卒業後の銀行員時代、海外留学に行きたかったから、まず英会話スクールに通ったんだ。当時はまだ若くて貯金も十分になかったから、銀行からお金を借りて行ったんだけど、なかなか流ちょうに話せるまでにはならなかった(苦笑)。他にも、中小企業診断士や米国公認会計士などの資格にもチャレンジしてみたけど、結局資格を取得するには至らなかった。
こんなふうに、一つ一つ振り返ると無駄なように見えるけど、最終的に自費で海外留学して、同等のスキルや知識を身につけることができたし、修士号も取得できた。何より、若いころに勉強したことは確実に身になっているし、今の仕事に役に立っていると自信を持って言えるよ。ちょっとしたマンションが買えるぐらい(?)のお金を使ってきたけどね(笑)。
シノちゃん ひぇー! しかもお金を借りたんでしょ!? それは確かに大変な投資だわ!
奥野さん でもね、こうして若い頃の散財があったからこそ気付けたことがたくさんあるんだよ。だから、自分のためにお金を使うことは悪いことではないと自信を持って言える。
今、若い人たちの間でFIRE(Financial Independence, Retire Early=経済的自立、早期リタイア)のための資産運用術などもはやっているみたいだけど、少なくとも僕は、人間の幸福は経済的なものだけではないと思っている。
経済的に自立することを否定するわけではないけど、やっぱり人との関わりも自分の幸福につながっているから、ひたすらお金を貯めて、増やして、それを取り崩していくって、なんかちょっと味気ないなって思ってしまうよ。
未来は予想できない!でも投資は未来につながる
シノちゃん
今日、こうして私と会ってお話ししていることも、奥野さんの幸福につながっているのかしら? ふふふー。
奥野さん
もちろんそうだよ! それにね、世の中というのは想像もしないことが普通に起きるんだ。
例えば、数十年前、「石油はいずれ枯渇する」と言っている人はたくさんいたけど、現在のスマートフォンの普及率を正確に予想できた人はいなかった。世の中は基本的に豊かになっていくんだ。重要なのは、予想し得ないようなことが起きたときに、経済的だけでなく、精神的にも豊かになれるかどうか、だね。
シノちゃん シノが大人になるころにはどんな世界になっているのかな? 私も奥野さんみたいにいろんなことに挑戦して、好きなお仕事を見つけることができるかな?
奥野さん うん、きっとできるよ。何より、シノちゃんのような若い人たちは、お父さんやお母さんたちより、「時間」という最強の資産をより多く持っているんだ。
さっきお話しした自己投資というのは、この「時間」と「お金」を上手に使って、若いうちに、自分という道具、つまり「才能」をより高めていくことなんだ。
その結果として、将来、より大きな資産を手に入れることができる、自分の未来をつくることができるのは自分なんだよ。シノちゃんはしっかり者だから心配ないね。
シノちゃん あら…奥野さん、なんだかやたらと私のことを、褒めてくれるわね。私はね、なんでも自分で納得しないと気が済まないの。だから、将来のことも自分で決めたいし、投資だって、自分が分からないものには投資したくないの。
奥野さん おっ、シノちゃん!その考え方、ウォーレン・バフェットと一緒だね!
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