記録的な企業収益サプライズがはらむ懸念
個人投資家を中心としたミーム株に対する投機のゲームの勢いには衰える兆しがない。高まるインフレ懸念は間違いなく市場へのプレッシャーとなっているが、投機的なトレーダーたちはこうしたマクロ経済の問題を無視して、AMCエンターテイメント(AMC)、ブラックベリー(BB)、カナビス銘柄のティルレイ(TLRY)などといった個別のミーム株に群がっている。
AMC(日足)
こうした銘柄の多くは、ファンダメンタルズ的には決して良好とは言えず、バリュエーションの観点からしても買われすぎである。投機家たちを引きつけている唯一のポイントは値動きの軽さのみである。
これらの取引のメインの参加者は個人のアマチュアトレーダーというのが一般的な認識となっているが、実際には大金を持つ洗練されたトレーダーたちがこれらの行動に関与し、動きを増幅させているとの指摘もある。
給付金を手にうかれて市場に入ったものの、動きに翻弄(ほんろう)され、一気に崩壊へと向かう可能性も高い。相場は「ファーストイン、ファーストアウト」が鉄則だ。相場に最後まで付き合っていてはいけない。
ロビンフッダーの1口座1ドルあたりの売買頻度はEトレード利用者の9倍、チャールズ・シュワブ利用者の40倍である。小規模な投資家が株を売買する頻度が高ければ高いほどリターンは悪くなる可能性が上がることは研究で明らかになっている。
一方、米国企業を取り巻くファンダメンタルズは今のところ良好だ。モルガンスタンレーによると、企業による収益の修正幅は市場予想を20%超上回っており、その修正幅の大きさはかつてない水準に高まっている。
これまでに大きく収益予想が上振れしたのは、リーマンショックで大きく落ち込んだ反動のあった2009年である。今回はその時をはるかにしのいでいる。
過去4四半期における企業収益サプライズは記録的な水準となっている
収益の修正幅は記録的な水準に高まっている
一見するとこれは株式市場にとってはグッドニュースである。しかし、株式市場が高値圏にあるなか、こうした収益の上振れは既に市場価格に織り込まれており、先行きの見通しが鈍化すれば大きな調整を余儀なくされることになる。
企業収益は世界的な刺激策の恩恵を受け、過去数四半期にわたって目覚ましい成果を上げてきた。しかし、既にこの好調は「既知」のものなのである。
確かに市場は正直だ。例えば、第1四半期の業績が絶好調であったにもかかわらず、FAAMG(フェイスブック、アマゾン、アップル、マイクロソフト、グーグル)と言われるハイテク株の動きは低調で、年初から見ると4月のピークを下回っている。アマゾンに至ってはS&P500に大きく劣後している。市場は先行きに対してどんなことを懸念材料として見ているのだろうか。
2021のアマゾンとS&P500先物のパフォーマンス
2021のマイクロソフトとS&P500先物のパフォーマンス