Take It Easy

 BLS(米労働省労働統計局)が6月5日に発表した雇用統計では、 平均労働賃金は前月比、前年比とも上昇。平均労働賃金は業種によって大きく差があることに加え、雇用の変動が依然として大きいため、はっきりとした傾向を言うことはできません。とはいえ、レイオフされていた低賃金労働者が大量に職場に復帰したにもかかわらず、平均賃金が前月比で0.5%上昇したことは、経済再開に伴う労働需要の増加が賃金上昇圧力となっている可能性を示しています。ただ、賃金が高騰する兆候は見られないことから、コロナ禍で最も打撃の大きかった業種で一時的な労働力不足になっているだけと考えることができます。

 雇用者の増加が予想を下回ったのは、需要ではなくも供給の問題であるという結論になったという見方が多くなっています。供給不足、つまり労働力不足は、良すぎる失業給付金による勤労意欲の低下が大きな原因として指摘されています。働くより失業していたほうが、収入が高いのだから仕方がない。そこで一部の州が、経済再開に伴い失業給付金の上乗せ金額の減額を実施。その途端に、求人サイトの閲覧数が5%もアップしたということです。ようやく働く気になったアメリカ人が、一斉に仕事に戻って来るのか。次回の雇用統計は、注目です。

 いずれにしても、FRB(米連邦準備制度理事会)に対する「緩和縮小」圧力が日増しに高まるなかで、今回の雇用統計が、熱すぎず、冷たすぎず、ちょうどいい結果となったことで、いちばんホッとしているのはパウエル議長でしょう。