We Built This City

 米国のバイデン大統領は4月、「米国における一世代に一度の投資」と銘打って、大インフラ投資計画を発表しました。1950年代の州間高速道路システムの建設以来、過去70年間で最大規模の計画になります。

 バイデン大統領のインフラ投資計画は、橋や道路の建設といった「オールド・エコノミー」だけではなく、水道管交換や高速ブロードバンドなどの整備に6,500億ドル(約71兆円)、人工知能(AI)など研究開発投資には防衛関連以外としては過去最大1,800億ドル(約20兆円)を見込んでいます。また中国からの部品供給の依存度を下げるために、半導体のサプライチェーン(供給網)強化にも取り組む予定。

 バイデン大統領は、前大統領が深刻化させた政治分断化を修復することをアピールするために「超党派による合意」を目指しています。そのため当初の提案(2.25兆ドル(約247兆円)よりも規模を縮小し1兆7,000億ドル(約187兆円)まで譲歩しましたが、共和党はより小規模な合意案を求めています。

 バイデン米大統領が議会に提出した2022会計年度(21年10月-22年9月)の予算教書は、歳出総額が約6兆ドルで、コロナ禍前の歳出を約50%上回ります。今年に入って1.9兆ドルの追加経済対策が議会に承認されたおかげで、第1四半期の米成長率は年率6.4%まで拡大。FRB(米連邦準備制度理事会)は、このペースが今年いっぱい続くとみています。

 イエレン財務長官は、米経済のために「大胆に行動する(Act Big)」が必要だと宣言して、1.9兆ドルの財源については米国債発行で賄う計画。しかし、インフラ投資計画についてはさすがに法人税増税と抱き合わせ。その意味で、このインフラ投資は、資産の再配分であって、景気刺激策としての効果は低い。…支出は約8年間に渡って行われるため、(現金給付のような)即効的な成長効果は期待できません。

 増税計画にともない、イエレン財務長官は、世界の法人税率引き下げ競争に終止符を打ち、世界的な「最低税率」を設定することで合意するよう働きかけています。米国企業が税率の低い国へ本社を移転することを阻止する手段ともいえます。