長期保有銘柄は3銘柄だけ、やはり短期投資家の側面を持っているバフェット

 今月1日、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの2021年次株主総会がオンラインで開催された。昨年、新型コロナウイルスによる移動制限のために出席できなかったチャーリー・マンガー副会長も参加し、総会の目玉であるバフェットとマンガーの掛け合いが2年ぶりに復活した。

 3時間半に及ぶQ&Aセッションを含め、総会は6時間近くに及んだ。SPAC(特別買収目的会社)の急増やロビンフッドを舞台にした個人投資家の投機的な売買、シェブロン株への投資、暗号資産などについて、それぞれの持論を展開した。

 年齢についてことさら取り上げるのはやぼであるが、バフェット90歳、マンガー97歳である。例年のことながらコーラを飲みつつ、休憩なしのぶっ続けで総会を終えた2人のバイタリティーには脱帽する。

 今回は、17日に米証券取引委員会(SEC)に提出されたバークシャーの2021年3月末時点の保有銘柄報告書(フォーム13F)をもとに、年次総会でのバフェットとマンガーのコメントも織り交ぜながら、バークシャーの3月末の株式保有状況を確認してみたい。

バークシャーが保有する株式評価額(フォーム13Fをもとに集計)

出所:石原順

 フォーム13Fによると、株式保有評価額は2020年末に比べて0.2%増の約2,704億ドル、保有銘柄数は43となった。今回の報告書において特徴的だったのは、バークシャーが長年にわたって保有してきたウェルズ・ファーゴ(WFC)の保有高を大幅に削減したことであろう。

 2017年12月末には278億ドルを保有していたが、2019年頃から持ち高を減らし始め、この1-3月期には2,637万ドル相当、株数にして67万5,054株を残すのみとなった。

バークシャーの保有銘柄
(緑:新たなポジション、ピンク:ポジションが減少したもの、青:ポジションが増加したもの)

出所:ゼロヘッジ

 年次総会で銀行株のポジション縮小について聞かれたバフェットは、バークシャーが昨年、銀行株の多くを売却したのは、銀行業界に対する信頼を失ったからではなく、ポートフォリオのバランスを取り直し、一つの分野に偏りすぎないようにしたためだと説明している。

「一般的に銀行は好きだが、考えられるリスクに比べてその保有比率が良くないと考えたからだ。バンク・オブ・アメリカの10%以上を持っていた。われわれよりも銀行にとって頭痛の種だ」、「銀行ビジネスは、10年前、15年前の米国に比べてはるかに優れている。世界中のさまざまな場所で行われている銀行業務は自分にとって懸念することかもしれないが、米国の銀行は10年前、15年前に比べてはるかに良い状態にある」と述べた。

 前四半期に保有が明らかになった石油大手のシェブロン(CVX)については既に51%を売却、一方、全米でスーパーマーケットを展開するクローガー(KR)のポジションを約52%増やし、新たに保険関連事業を手がけるエーオン(AON)を取得した。

 日本経済新聞の「マーケット反射鏡 それでも売った銀行株 バフェット氏の胸騒ぎか」によると、バフェットが2000年以降に保有した176銘柄について、その平均保有期間は4.54年にとどまると言う。

 さらに、ウェルス・ファーゴの売却により、20年以上の長期にわたり保有しているのは、アメリカン・エキスプレス(AXP)、コカ・コーラ(KO)、ムーディーズ(MCO)の3社だけとなった。

 バフェットはかつて、「10年間株を保有する気がなければ、10分間保有することさえ考えない方がいい」と述べている。長期保有のイメージとは裏腹に、見切り売りを的確にすることで、それなりのリターンを確保している。

 それが、バフェットが天才投資家とされているゆえんである。詳しくは今年3月のレポート「ウォーレン・バフェットは実は短期投資家!?バフェットのすごさは銘柄の買い時より売り時にある」を参照されたい。