投資家のためのウッドストック、バークシャーの年次総会からのポイント

 バークシャーの手元キャッシュを確認しておこう。2021年3月末時点のキャッシュポジションは、過去最高となった2020年中頃とほぼ同水準にまで高まっている。

バークシャー・ハサウェイの手元現金とNYダウの推移(2021年3月末時点)

出所:石原順

 なかなか積極的な投資の機会がないというのが背景であろう。しかし、バフェットは米国の成長については、引き続き強気なスタンスを崩していない。年次総会の冒頭挨拶で、米国企業と資本主義を支持する姿勢を改めて示し、現在、世界の時価総額上位6社のうち5社が国内企業で構成されていることを強調した。

「1790年には、(米国人は)世界の人口の1%の半分しかいなかった。そのうち60万人は奴隷だった。アイルランドの人口は米国の人口より多かった。ロシアには5倍の人がいた。ウクライナにはその2倍の人がいた」

「しかし、われわれはここにいた。何を持っていたか?未来への地図を持っていた。232年後の今、世界のトップ6社のうち5社を米国企業が占めている。これは偶然ではない。私たちがより賢く、より強くなったからではない。このシステムは非常にうまく機能している」

 一方で、当面のリスクとして、コロナウイルスからの回復期にある米国において物価上昇圧力の兆候を見ていると述べ、インフレ圧力の高まりを懸念する市場参加者の声を裏付けた形となった。

「かなりのインフレを目撃している。(傘下に持つホームビルダー企業を例に取り)われわれは価格を上げているし、人々もわれわれに対して価格を上げている。そして、それは受け入れられている」

「住宅の価格は上がっている。コストはどんどん上昇している。鉄鋼のコストもだ。毎日のように上がっている」

「これが経済だ。Red Hotの状態にある。そしてわれわれはそれを予想していなかった」

 バフェットはロビンフッドについて、ここ1年から1年半の間に株式市場に加わったカジノの側面の非常に重要な部分になっていると述べた。

「(ロビンフッドは)違法なことではない。しかし、それをやっている人たちを中心に社会が構築されることはないと思う」

「しかし、アメリカが成し遂げたことは、全体として立派なことだと思う。米国企業は、人々がお金を預けて貯蓄するための素晴らしい場所になっている。しかし、米国企業はギャンブル・チップも生み出している。そのギャンブル・チップに合わせて、私が1日に30、40、50回の取引をするように言い、でも手数料は取らないと言えばどうなるか。このようなことが増えないことを願っている」