大統領選挙では共和党のトランプ氏が勝利し、さらに議会も上院・下院とも共和党が過半数を取ったため、2017年、公約であった減税が実施される可能性が高くなっています。現在、アメリカ(連邦)の個人所得税の最高税率は39.6%ですが、投資所得に関してはこれに3.8%が上乗せされ43.4%となっています。例えばニューヨークのマンハッタンに住んでいると、これに8.82%の州税と3.876%の市税が加算され、合計56.096%の税金がかかります(但し1年以上の長期投資所得は軽減税率が適用)。

2017年はこのうち、連邦所得税率が39.6%から33%に引き下げられると見られています。また投資所得に対する3.8%はオバマ大統領の下で成立した医療保険制度「オバマケア」開始と共に導入された税であるため、廃止される可能性が高くなっています。即ち、今年いっぱい43.4%という個人所得税の最高税率は、2017年には10%ほど低下し、33%になる見込みです。もちろん減税が成立するには新政権が誕生し、両議会が承認、大統領の署名を経る必要があるので時間もかかりますし、成立する保証もありませんが、既に市場ではそれを先取りする動きが起こっています。それは2016年初来株価騰落率がマイナスの「2016年敗者株」を売る、という動きです。

アメリカでは株式の売買で実現損が出た場合、3,000ドルを上限に通常所得と相殺することができます。また他の銘柄で出た実現益と相殺することもできます。例えば56%の税金を払っている人が短期の株式売買で3,000ドルの実現損を出した場合、1,680ドルの節税効果があることになります。しかしこのように比較的大きな節税効果があるのは恐らく今年までで、2017年に税率が10%下がるとすれば、1,380ドルの節税効果でしかなくなります。他の銘柄で出た実現益と相殺するとすれば、金額によっては桁違いの節税効果を得ることができる状態で、このメリットを受けるには、12月末までに「2016年敗者株」を売らないといけないのです。