12月末まで、相対的に「2016年敗者株」を売ることが有利な状態なので、実際に市場でもそのような動きは出ています。ただ、今年は特に大統領選挙以降、株式市場全体は堅調なので、比較的「2016年敗者株」が少ない状態なのです。これによって「2016年敗者株」が希少価値化し、実力以上に売られやすい状態になっているはずです。例年、税金対策として12月末までに実現損を確定する売りが増え、年が明けた途端にそのような売り圧力が無くなるため株価が上昇する「1月効果」という動きは見られます。しかし今年に限っては2017年に減税が実施される可能性が高いので、1月効果が例年以上に強く出てくる可能性が高いのです。そしてこのように1月効果が強く出る機会は滅多にあるものではありません。

これは企業の業績やファンダメンタルズ、即ち企業価値に全く関係の無い話で、単に税制変更によって投資家の都合によって短期的に需給が歪み、株価が割安になるという点で、逆に「良いビジネスを安く買う」絶好の機会と見ることができます。ただ、下がっている銘柄であれば何でもいい、というわけではありません。ここでいくつか、注意すべき「2016年敗者株」の条件を挙げておきたいと思います。

  • 金利敏感株は避ける
    REITや公共株など、「2016年敗者株」の中には金利上昇が逆風となっている株が散見されます。これらは金利上昇が止まらない限り反転は望みにくく、税制変更とはあまり関係ない理由で売られているので注意です。
  • 業績や財務内容がしっかりしている企業を選ぶ
    業績や財務内容がしっかりしている企業は通常、株価もそれほど下がらないものですが、そのような株に対して一時的要因や税制変更によって売り圧力が強まっているとすれば、それは絶好の投資機会となります。
  • 民主党政権から特別の恩恵を受けてきたようなセクターは避ける
    これらセクターはこれまで8年間、民主党政権によってメリットを受けてきたのであって、共和党政権下で苦戦するのは止むを得ません。税制変更とは関係のない話です。
  • 他の条件が同じであれば大型株よりも中小型株を狙う
    一般に、大型株よりも中小型株の方が出来高は少ないものです。税制変更のメリットを取ろうという動きが集中すると、出来高が少ない中、実力以上に株価が下落しやすくなります。出来高が少ないので、年が明けるだけでこのような売り圧力が無くなり、株価が上昇するというわけです。

このコラムをお読みいただいている殆どの方は日本の居住者だと思いますので、年内に株式を売る(=税制変更のメリットを取る)方についてはあまり関係ないと思います。一方でアメリカの投資家は2017年の税制変更を見込んで年内は「2016年敗者株」の売りを積極化させるので、それらの株価は安くなるはずです。これは逆に言えば、全ての投資家に株式を割安で買うチャンスが提供されているようなものであり、この好機を生かさない手は無いと思います。

(2016年12月14日記)