物価上昇、夏場まで続く?

 このようにベース効果による物価上昇は夏場まで続くのは確実という見方は広がってきており、また、供給制約による物価上昇の品目もまだ限られているため、インフレは警戒しているものの、まだパニック的な動きにはなっていないようです。しかし、今後、他の品目にも広がってくれば、市場のリスク回避姿勢が強まってくるかもしれないため注意は必要です。

 米長期金利、ドル、商品相場などもインフレを警戒しながらも、一本調子に進むのではなく上げ下げを繰り返しながら、インフレをどのように消化していくのか注目です。

 今年に入ってからの通貨の優劣は、ワクチン接種ペースと出口戦略の時期が決める動きとなっています。出口戦略はインフレ動向によって決まりますが(FRBは雇用の回復を重視)、日本は接種ペースも遅く、物価も再びデフレに傾き始めており、通貨優劣の中では「円」は最も分が悪い状況となっています。その割には110円には届かず、もたもた感が強い状況となっています。

 今週18日に発表された日本の1-3月期GDP(国内総生産)速報値は実質年率で▲5.1%と、米国の+6.4%とかなり見劣りする結果になりました。更に4-6月期のGDPもマイナス成長の可能性が高く、2四半期連続のマイナスとなればリセッションということになります。また、英オックスフォード大学などの調査によると、世界のワクチン接種状況で日本は世界110位前後と、発展途上国レベルに低迷しているとの調査結果が出ています。今や、「円」を取り巻く環境は最悪の状況となっています。

 しかし、このような環境の中で、これから日本の接種ペースが早まれば、経済活動が活発になり、景気は上向くとポジティブに捉えられる可能性もあります。接種ペースが早まるにつれて円高へ反応するかもしれません。

「円」を取り巻く環境が「陰の極」であるならば、これからは悪い情報には反応が鈍くなり、良い情報に敏感に反応していくかもしれません。17日から日本では大規模会場での接種が始まりました。接種ペースが早まるとの期待が高まり、「円」を取り巻く環境は好転するかもしれません。

 また、逆に、先行した欧米では接種ペースの鈍化や、集団免疫への達成ペース、物価上昇の持続性、雇用回復の遅れなど、ネガティブな側面にもマーケットがより注目するかもしれません。GDPも物価も1年前と比べた押し上げ効果が剥がれる夏場以降も期待先行となってマーケットは織り込んでいくのかどうか注目ですが、前のめりにはなれず、半身の構えでマーケットには臨む必要があると思っています。