一時的?問題視すべき?FRBと市場の間にギャップ
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、このような供給制約に伴う物価上昇は一時的なものとして問題視していない姿勢を貫いていますが、市場との見方とはギャップがあり、今回のCPIの大幅上昇を受けて、そのギャップがどんどん広がっていくかもしれません。
バンク・オブ・アメリカが3月に実施したグローバルファンドマネージャーに対する調査がそのことを物語っています。その調査によると、警戒すべき最大のテールリスクを「インフレ」とする回答が最多とのことです。テールリスクとは、発生する可能性は低いものの、起こると甚大な影響を及ぼす出来事のことですが、昨年2月以降、最も警戒されていた「新型コロナウィルス」は3番目に下がり、2番目は「金利上昇」となりました。つまり、「コロナ」よりも「インフレ」や「金利上昇」の方が怖いという調査結果になりました。
そして4月の調査では、1位が「テーパータントラム(金融緩和縮小による市場波乱)」、2位が「インフレ加速」、3位が「コロナ」とのことです。インフレは加速し、それを制御するため、FRBの政策変更によって起こる市場の混乱を最も恐れているということを示しています。FRBと市場とのインフレに対する見方のギャップが広がれば広がるほど混乱が大きくなるため注意が必要です。FRBは、投資家の不安心理解消のためにますます丁寧な説明が必要になります。
今後も、インフレ指標によってマーケットは大きく揺さぶられることになりそうです。そして、FRBのインフレに対する見方、あるいは金融緩和に対する姿勢が変化した時には最も波が大きくなるため注意が必要です。そのタイミングは6月のFOMC(連邦公開市場委員会)なのか、8月のジャクソンホール会議でテーパリングに触れるのかわかりませんが、その時期が近づくにつれてマーケットは身構え、敏感になることには留意しておく必要があります。
米CPIの翌日13日には米4月PPI(卸売物価指数)が発表されました。前年比で+6.2%と予想を上回りましたが、マーケットはベース効果などを認識しているため冷静な反応を示し、その日のNYダウは上昇しました。
また、原材料の高騰が供給制約の一因となっていますが、PPIが発表された13日には国際商品相場が全面安となっています。商品の総合的な値動きを示すCRB指数(エネルギーや農産物、金属などで構成される指数)は、前日に付けていた約6年振りの高値から2.4%低下しました。10日に過去最高値を付けていた銅が3.8%下がったほか、原油や穀物も軒並み下落しました。米長期金利の上昇に伴いドル高が進み、ドル建てで取引される商品全般の下げ圧力となったようです。また、CPIを受けて、FRBの早期引き締めへの警戒感が強まったことも下げ圧力になったようです。