親子上場解消に関するTOBの具体例
プレミアムが30%以上ついた事例で一定数見受けられたのが、親子上場解消に伴うTOBです。実際にどのような事例があったのか、3例を挙げて説明します。
1.ソニーがSFHをTOB(2020年5月)
ソニーは2020年5月20日から7月13日まで、ソニーフィナンシャルホールディングス(以下、SFH)のTOBを実施。7月14日には買付手続きを終えて完全子会社化しました。
このTOBが正式発表されたのは5月19日。18日終値は2,064円から急上昇して19日には2,412円、20日には2,595円と買付価格の2,600円付近まで上昇。その後も2,600円台付近を推移して、そのまま上場廃止に至りました。直近3か月の平均株価から算出したプレミアムは、33.06%です。
なおソニーはSFHの発行済株式を当初から約65%保有しており、TOBは比較的スムーズに進行、完了したと見られています。
2.ライクがライクキッズをTOB(2020年6月)
ライクは2020年6月10日から7月21日まで、保育事業を行っているライクキッズのTOBを実施しました。
TOBが発表される前日の6月8日終値は768円。その後6月9日に772円、6月10日に922円と値を上げ、6月11日には1,002円と、買付価格の1,005円付近まで上昇しています。
6月8日終値から算出するとプレミアムは30.8%。しかしこの銘柄は2020年3月に、300円台から400円台を推移しています。そのため直近3か月の平均株価から算出したプレミアムは70.28%と、かなり高水準となりました。
3.NTTがNTTドコモをTOB(2020年9月)
近年まれに見る大型TOBだったのが、日本電信電話(以下、NTT)によるNTTドコモのTOBです。2020年9月30日から11月16日まで実施され、その買付総額は4兆円超と、日本初の1兆円超TOBとなりました。
株価は9月28日終値の2,775円から29日には3,213円、そして30日には3,885円と買付価格の3,900円付近まで急上昇。プレミアムは、直近3か月の平均株価から算出すると32.29%、9月28日終値から算出すると40.5%と高水準でした。こちらも比較的好条件なTOBだったと言えるでしょう。
TOBを狙って株式投資するメリット・デメリット
TOBされた場合のプレミアムを狙って、TOBされる可能性のある銘柄を保有するメリット、デメリットは何でしょうか?
TOB狙いで投資するメリット
TOB狙いで株を買うメリットは、TOBの発表・実施によって株価が急上昇し、買付価格付近で売却できる点に尽きます。TOB発表後の上げ幅は一般的に30%前後ですが、敵対的TOB案件であればそれ以上のプレミアムが付与される可能性もあります。
大きな利益が得られる可能性に賭けて事前に投資をしておくのは、有効な投資手段の1つと言えるでしょう。
TOB狙いで投資するデメリット
TOB狙いで株を買うデメリットは、そもそもTOBが行われない可能性があることです。TOBを狙って前々から投資していても、TOBが実際されなければ株価は大きく上がらず、資金をただ寝かせておいただけになってしまいます。
ただしPBRが低い銘柄であれば、TOBが実施されなかったとしても大きく株価が落ち込むリスクは低いです。TOBが期待できる低PBR銘柄に絞って投資をするなら、投資効率はそこまで悪くないのではないでしょうか。